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表②:ドル円 週足(赤:陽線 青:陰線)

ドル円は今回の下落により、節目の115円を割り込み、一時110円台まで突っ込みました。 ここらで「為替介入」という単語が出てくるようになりましたので「為替介入とは?」を掘り下げてみましょう。

2014年10月31日のハロウィン緩和の時の高値と翌営業日(日本は祝日)11月3日の安値の間にできた窓を、2月11日の下落によって埋めることができました。
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表③:日経平均 週足(赤:陽線 緑:陰線)

日経平均は、ドル円よりも先に1月18日~22日の間に窓埋めを完了し、ハロウィン緩和の時よりも更に下の水準で、先週を終えています。

これによって、安倍政権になってからの黒田緩和第2バズーカ、第3バズーカ(補完措置)、第4バズーカ(マイナス金利)が打ち消されてしまいました。FXやバイナリ―オプションなどの為替取引をしている方には、下落もまたチャンスではありますが、現物株の取引をされている方にとっては、背筋の凍りつくような思いでしょう。

また、この下落をチャンスと見て、外貨預金に飛びついている顧客がたいへん増えていると、某メガバンクで働く知人は言っていましたが、これを読んでいる皆さんは、落ちてくるナイフを掴むようなマネはしないように気をつけましょうね。

先週は、115円割れから為替介入、レートチェックと噂が飛びかいました!

さて、来月は、決算期を迎える企業がたいへん多いことは皆さんご存知のことだと思います。日本最大の稼ぎ手企業トヨタも3月が決算期ですが、トヨタの想定為替レートは115円です。現在は、その水準を下回ってしまいましたね。多くの日本の輸出大企業は想定為替レートを115円~125円で設定しています。ですから、実質販売よりも為替差益で儲けていたような企業にとっては、やはりこの2週間の下落はとても痛いわけです。
また、株価の上昇でここまでやってきた安倍政権にとっても、大変なマイナス材料なのです。ですから、先週は急に、115円を割れてから為替介入の期待感と政府要人からの口先介入が出ていましたね、。それくらい、115円をポイントとして考える人が多いということです。

日本では、久しぶりの為替介入騒ぎですので、今回は為替介入についてお話ししたいと思います。

事の発端は、2月9日に115円を割れてからです。東京市場のお昼頃に114円20銭まで一時下落し、東京市場大引け後は115円台を回復。大引け後から日銀の「レートチェック」の噂が広がり始めました。

レートチェクって何?

レートチェックとは日銀の担当者から、民間銀行の担当者に「今レートいくらですか?」と電話が入ることを言います。もちろん、日銀の担当者が現在の為替レートがわからないわけがありません。御上が、今の為替レートを気にしているよ!というサインなのです。
今回のケースであれば、115円を割って、下へのトレンドに投機筋が加勢してくるところに、釘をさした、という一種の口先介入みたいな感じです。この噂によって9日の東京市場大引け後、一時ドル円は115円54銭まで上昇しました。
その後も、先週は介入を警戒しつつ、おっかなビックリ下を試しては急に上昇、そしてまた安値を更新する展開となりました。
そして、11日、欧州時間序盤、110円台に突入すると今度は介入騒ぎとなりました。
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表④:ドルスイスフラン  1分足(赤:陽線 青:陰線)

日本時間21:00を回り、急にドル円とユーロスイスが急騰したため、その前に、スイス銀行のジョーダン総裁が「為替市場に介入する用意がある」と言っていたので、「あっ、冗談じゃなく、やったんだ」と思っていたら、ユーロスイス・ドルスイスよりもドル円のほうが、勢いがあり、あれれれ?っと思っていると、日銀による介入騒ぎとなりました。
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表⑤:ドル円 1分足(赤:陽線 青:陰線)

産経新聞は、為替介入観測と記事を出しましたが、おそらく、これは介入ではないと思われます。
http://www.sankei.com/world/news/160212/wor1602120007-n1.html
ちょっと、勢いがもの足りないことと、その後の値動きで、違うような気が私はしています。その後、当局者は、当然のごとくコメントはしませんが、月末になれば、介入を行ったか、行わなかったかは分かること。その時を待ちましょう。

為替介入(外国為替平衡操作)とは?

先週は、日銀が為替介入と何度も耳にしたと思われますが、そもそも、為替介入は、日銀の黒田総裁に権限があるのではなく、財務省のトップ、麻生大臣に権限があることについて、勘違いをしないよう、今覚えておきましょう。

また、為替介入は「外国為替平衡操作」と言う名称が正式名称になります。

為替介入とは、為替相場に影響を与えるために、当局が為替売買を行うことで、相場の急激な変動を抑え、安定化を図ることを目的としています。

介入を行う場合、麻生大臣が為替介入のタイミングや介入額を決めて、GOサインを出し、日銀に連絡します。その後、日銀は民間銀行等に連絡を入れ、先ほどのレートチェックの時と同じように「今レートいくらですか?」と連絡を入れ、「それでは○○○本お願いします」とオーダーを出し、介入がスタートします。ですから、レートチェックの噂でも、市場参加者はビクッとするのです。民間銀行への連絡は、一つの銀行だけではなく複数の銀行に連絡を入れ、厚みを作り、一気に相場を反転させようとします。

この介入時の経験のしたことのない方は、絶対にしてはいけないことは「逆張りエントリー」です。介入規模がどの程度か、我々個人投資家には、その介入時はわからないので、大きなケガを負うことになります。逆に順張りでもタイミングを逃すと、買いの介入であれば、一時的に売りのレートが引っ込められてしまうので、買いのエントリー自体ができなくなることもあります。

介入規模にもよりますが、1日だけで終わってしまうときもありますが、数日にわたって介入が継続する時もあります。

介入の実績や規模は、月末の最終営業日、日本時間19:00に財務省のホームページに掲載されます。
http://www.mof.go.jp/international_policy/reference/feio/monthly/index.htm

日本は今介入を行えるのか?

ただ、介入は市場での売買の自由さを破壊する行為でもあり、通貨ペアの介入の行う側は自国通貨防衛のために行いますが(日本の場合は、自国通貨を売ることが多いですが)、介入される側の通貨の国にとっては、とても不快な行為です。ですから、今回もし日本がドル円の介入を行っているようであれば、事前に日本の財務省側から米国の財務省側に連絡を入れることが基本となります。

そう考えると、日本が115円割れの円高を嫌う一方で、米国もドル高を嫌っていますから、日本が介入を行えるのかという疑問が残ります。
基本的に日本が今介入を行うには、正当な理由として「過度な投機の通貨の変動」という理由が必要と思われ、先週のドル円の1日の変動幅が2円から3円なので、これでは「全く過度な投機の変動」ではない状況にあります。

最後に日本が介入を行ったのは2011年の震災やドル円が新安値をつけに行く過度な円高に苦しんだ時です。
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表⑥:2011年 ドル円 週足(赤:陽線 青:陰線)

この2011年は3度、介入実績があります。
①は3月18日に6,925億円の介入を1日だけ行いました。
②は8月4日に4兆5,129億円の介入を1日だけ行いました。
③は10月31日~11月4日にかけ5日間の介入を9兆916億円行いました。

これを見て、介入金額が全く違うにも関わらず、ローソク足の安値と高値の幅が変らないことが分かると思います。①のケースは震災を受けての急落のため、海外が助けの手を差し伸べてくれたので、日、米、加、欧州中銀によるドル買い円売りの協調介入を行ったため、小さい規模で介入効果を受けることができました。
しかし、2度目、3度目は単独介入のため、①とは比べられない金額を必要としました。

この時は、輸出立国である日本が円の最高値を更新するような苦しい時期でしたので、海外からの批判はあったものの、日本としては正当な理由はあったのです。

しかし、今は違います。まだ110円~115円の間で推移しているだけなのです。昨年6月に125円を見ているので、10円以上下がってしまったと思われる方もいらっしゃると思いますが、あの125円は過度な円安であり、現在のこの110円~115円も円高ではなく、まだ円安の水準であることを認識しなければいけません。これから更に5円~10円の下落があってもおかしくはないと私は思っています。

また、介入時の①②③それぞれのポイントを見て頂いてお分かりの通り、介入の効果はあくまで一時的な効果にすぎず、暫くすると効果はなくなります。

現在、市場は介入警戒感(日本の投資家は期待感)が漂っていますから、先週よりは上にも下にも動きにくくなっていることは確かです。
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表⑦:ドル円 5分足(赤:陽線 青:陰線)

12日金曜日の昼ごろは、「黒田日銀総裁、首相官邸に入る」、「浅川財務官、首相官邸に入る」のニュースだけで、「介入か?」と相場が上昇しているような感じですので、つまらぬニュースに振り回されぬようにご注意ください。

ただ、麻生大臣の発言が大変増えていますし、何らかの準備を始めている可能性はあると思います。

念のため、110円割れ、105円割れのラインでは、米国との協調介入は難しいので、日本の単独介入を警戒しておいたほうがいいかもしれません。年度末を迎える企業が多いだけに、高いところを買わせてあげる(ドルを円に替えるチャンス)配慮が、安倍政権維持のためにあるかもしれません。理想を言えば、マイナス金利発動の時に、多くの企業が円転できていればいいのですが・・。
ただ、先ほどもお話しした通り、介入の効果はあくまで一時的効果のため、介入が終った時は絶好の売り場であることは絶対に覚えておきましょう!。

おまけ・・今週は?
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表⑧:ドル円 週足(赤:陽線 青:陰線)

今週は、ドル円週足を見てお分かりの通り、一目均衡表の雲の下に潜り込みつつあります。トレンドは下方向で継続です。ただし、表①のドル円日足を見てお分かりの通り、5日移動平均線から乖離してしまっていますから、一旦横ばいあるいは戻りの可能性も頭に入れておきましょう。戻り目途は、マイナス金利発動の時の121円68銭と先週の安値110円95銭を結んだフィボナッチ38.2%戻しが115円付近であると同時に週足雲の下限も115円付近となりますので、このあたりが意識されると思っています。

先週12日のNYダウ終値が313ドル上昇と大きく上昇して引けていますので、月曜日は日経平均も上昇が期待されます。それに連動し、ドル円の上昇も期待されますが、月曜日寄付き前の本邦GDPの発表と、中国が春節を終え、市場に戻ってきますので、この2つの材料が足を引っ張ることも考えられますので、しっかりと動きを見ておきましょう。

今週も、先週同様、荒い値動きと、値が飛ぶ動きにはご注意ください。