金融緩和とは?なぜ為替が動くのかドル円を例に解説!デメリットとメリットも
管理人さん

為替を動かす要因として、よく耳にするのが金融緩和追加緩和量的緩和という単語です。

日本なら黒田総裁、ユーロ圏ならドラギ総裁、アメリカならパウエル議長・・と、その通貨の銀行の偉い人が発言する時に出てくる言葉です。

「追加緩和に関しての発言があってドル円が上がりました」とか

「量的緩和で円が売られた」等よく耳にします。

何故、金融緩和で円安になるのでしょうか?

ここでは追加緩和って何? 金融緩和すると円が売られるのは何故?

を解説していきます。 簡単なので5分程で理解できます。

金融緩和(政策)とは

金融緩和政策は、国全体の景気が悪く、世間のお金の流れが滞っているときに、お金の流れを良くして、結果的に景気を改善させようとの目的で行われる、経済政策のひとつです。

追加緩和というのは文字通りすでに実行されている金融緩和政策に、追加で上乗せして金融緩和政策が行われることです。

景気がいい時はお金が回るというのは、簡単に言えば

お店で物を買う→店が儲かる→沢山仕入れる・店舗拡大→お店がもっと儲かる・働く場所が増える→従業員の給料アップ!→給料アップして余裕ができたらお店でもっと物を買える→お店がもっと儲かる→もっと沢山仕入れる→(繰り返し)

といったようにお金が回る=景気が良いという事になります。

「流れが悪いから、ここにお金を投入して流れをよくしよう」という政策が金融緩和です。

テレビのキャプチャーがありました。↓これが日銀黒田総裁です。
kanwa

この説明だけだとメリットばかりになってしまいます。

デメリットに関しては後に記載します。 まずは為替への影響を考えてみましょう。

為替への影響~円安になる理由~

で、なぜドル円が動くのか? 基本的には「追加緩和します」という発言があれば、ドル円は上昇しますね。その勢いはとてつも無いです。

これは円が売られるからです。 円安=ドル円上昇です。

理屈は単純で、円の価値が下がるからです。

モノが、沢山あるときには値段が下がります。 それと同様に、その国に流通するお金が増えることになることから、その通貨の価値は世界的には下がります。

ここが今回の重要なポイントです。

お金が沢山あれば物やサービスの価値が上がります。 以前は100円で買えたリンゴが、200円出すから欲しいという人で溢れれば200円になります。 これが物価上昇現象です。 リンゴの価値は変わらないのなら、これは円の価値が下がったとも言えるのです。 価値が変わらないものとして、リンゴをドルに置き換えてみると全てがつながります。

ちなみに黒田総裁は物価上昇2%という明確な目標に向かって、金融緩和を始めました。

別のケースで言い方を変えてみると、例えば「アメリカのFRBが政策金利を下げる(=金融緩和です)決定をした」とのニュースが流れたとすると、アメリカ国内に米ドルの流通が増えると見込まれることから、米ドルの価値が下がり、ドルは売られるため、ドル安=ドル円下降となります。

二つの「緩和」量的緩和について

さらに詳しく解説します。 上記の説明でなんとなくわかったという方は飛ばしてデメリットの段落に向かってもよいでしょう。

具体的な「緩和の方法」は、ひとつは各国の中央銀行(日本の場合は日本銀行)が、全国の金融機関にお金を貸し出す際の金利(政策金利)を引き下げる決定をすることです。

米利上げとは? 政策金利って何なの? ドル円が動く理由

逆が利上げです。

金利は、銀行からお金を借りる時の利子です。 利子が高いとお金を借りづらく、企業が潰れたり、人件費削減したりどんどん景気が悪くなってしまいます。 利子が安ければ企業がお金を借りやすくなります。

量的緩和とは

2018年現在、金利を引き下げに下げて、ついに金利がゼロになっています。(ゼロ金利といいます。)※さらに、マイナス金利などという単語も出てきましたが・・

そこで、中央銀行が全国の金融機関の資産である国債などを買い取り、金融機関のお金を増やす(銀行に現金が貯まる)という緩和法を現在はとっています。 これが「量的緩和」です。

この決定は、自国の景気状態だけではなく、諸外国との関係についても考慮され、関係が深い諸外国の景気の影響によって自国の景気が良くなりそうなのか悪くなりそうなのか、ということも調査され、慎重に検討されて決められます。

いずれも、「緩和」のときには、金融機関や銀行は会社や個人への貸し出しに使えるお金が増えて、たくさん貸し出せるようになります。

また、金利が下がれば、借りる側には、お金を将来返すときに一緒に返す利子が少なくて済みます。一般の金融機関は、中央銀行からお金を借りやすくなります。
一般の金融機関も、一般の会社や個人に低い金利でお金を貸し出そうとします。

このため、一般の会社は、金利が低いうちに銀行からお金を借りて、支店や工場を増やそう、と考えることになります。支店や工場が増えれば、働く場も増えることになります。また、個人も、銀行からお金を借りて家を建てたり車を買ったりなど、高価なものも買いやすくなることで、消費拡大につながります。
結果的に世の中のお金のめぐりがよくなって、景気の回復につながることが期待されます。

なお、金融緩和政策の実行時期が決まるようなニュースが流れたり、追加緩和されるとの憶測のニュースが流れたりすると、その国に流通するお金が増えることになることから、その通貨の価値は世界的には下がります。

ただしこれは「一般的には」の話であって、実際のときの相場が上がるか下がるかは、そのとき同時に起こっている様々な国際情勢などの状況にもよるため、いつも必ずそうなるとは限りません。

金融緩和のデメリット

お金を回す事で景気が良くなるというのは分かりました。

では、「紙幣をたくさん印刷して、ばら撒けばいいだけじゃないのか」という疑問が生まれます。

アメリカは日本よりも先に金融緩和政策をして景気が回復しました。 そこで、現在は逆の利上げ(金融緩和の逆)政策をしています。 何故、景気が悪くなると思われる、利上げをする必要があるのでしょうか? 金融緩和のデメリットも知りたいです。

お金と物の価値のバランス

がポイントで、デフレ状態では将来に向けて「お金が大事なので貯金しよう」という心理は、お金>物という心理です。

物が売れない=景気が悪い=給料安い=物買わない=物売れない=給料安いの悪循環。

では、ここにお金を投入して、お金<物となったらどうでしょうか。

お金より物に価値がある=物を買う=商品売れる=賃金上がる=物買う=賃金上がる=バブル

となります。 これがインフレです。

このインフレがデメリットだというのが基本的な理由です。

インフレのデメリット

「モノよりもお金が多い」状態になってしまうと、少ないモノは「高くてもいいから欲しい」という人に売られていきます。

お店は「高くても売れるんだったら、高くしよう」とします。

結果、物の値段が上がってお金=物というバランスに近づいていこうとします。 120円のジュースが1,200円という風になります。

一度インフレが勢いをつけると、どんどん加速していくという性質があります。 これをハイパーインフレといいます。

そうすると、お金の価値が下がるというのが最大のデメリットです。 正に円安に直結しています。

ハイパーインフレは何故ダメなのか

しかし、これだけでとまだしっくりきません。 ジュースの値段が10倍になったとしてもお給料が10倍になれば我々としては通貨の単位が変わるだけ。 (ジュースの値段が上がったけど給料が上がらない場合はデメリットですが・・)

しかし、日本単独でこの状態になると、世界中から通貨の信用がなくなり、現在多くの海外投資家が日本への投資を撤退してしまいます。

国内だけでなく、海外への影響を考えるとハイパーインフレは大きなデメリットです。

身近で分かりやすい例

対海外だと分かりづらい方にその他の例として、既に沢山稼いで貯金で暮らしている人・資産家にとってはインフレは絶対的に困るという事は想像しやすいかもしれません。

例えば退職金1,000万円もらいました→インフレが進むにつれてその価値が低くなってしまいます。

ハイパーインフレになるまで放っておいたら、1,000万円が紙屑になってしまいますし、何よりも物の値段が安定しません

「1億?安いね」という世界になると、収入が0円~1億というふり幅になります。

都市伝説と言われていますが、バブルの時代にタクシーをとめるのに札束をチラつかせるというエピソードがあります。 本当にそういう時代になってしまうとお金がない人はタクシーに乗れないという社会になってしまいます。

また、海外輸入品が高くなります。 1ドル100円が1ドル1,000円になれば、10倍になります。 これは金融緩和が成功して実際に給料が10倍になればデメリットとしては考えられないという理屈ではあるのですが、実際はお給料の上昇よりも価格面での上昇の方が高くなるのか? 多くの参考資料でもデメリットとして挙げられていました。

日本だけで勝手にやった事だと、円の価値が下がれば海外の物が高くて買えないという事になります。

日本はデフレ脱却=インフレ=金融緩和政策

日本の景気が悪い・デフレだと言われて15年くらい経つわけで、就職氷河期なんて言葉もあって「景気が良い」とは決して言えません。 その為、安倍政権ではデフレ脱却、インフレを目指しています。

何故、ここまで金融緩和をしなかったのか? と疑問が生まれます。

経済学者の上念司氏が声を大にしてずっと訴えているのですが、黒田総裁になる前の旧日銀によるミステイクだという説もあります。 安倍政権になり、黒田総裁とタッグを組み、金融緩和だ!デフレ脱却だ!というのがアベノミクスの一つです。

「上念司 金融政策」 で検索したり本を読むと金融政策に関しては詳しくなれるでしょう。 ズバズバ言うので人気ですが、ゆえに「間違ってたじゃん」という事もあります。 ただ、金融緩和の件に関しては過去に発言していたことが今になってその通りになってきたな、という事はデータで出ていたりして興味深いです。