実質実効為替レートとは
管理人さん

2015年6月10日に黒田日銀総裁の発言や、2018年のトランプ政権の発言からこんなコメントがありました。

実質実効為替レートで見ると円安・円は割安」

実質実効為替レートでここからさらに円安はありそうにない」

というものでした。

このコメントが出ると、ドル円は下落(つまり円高)する傾向にあります。 では、実質実効為替レートとはなんなのでしょうか?

実質為替レートと、実効為替レートの2つを別々に解説します。

実質為替レートとは

実質為替レートとは、通貨ごとにインフレ率の違い・物価の変動を考慮して算出された為替レートの事です。

例えば、分かりやすい数字で例えてみます。

  1. 2014年1月1日の為替レートが1ドル=100円
  2. 2015年1月1日の為替レートが1ドル=50円

になったと仮定します。 ドル円のチャートで見ると下落しています。 2倍の円高です。

一方、物価の変動は、

  1. 2014年1月1日のハンバーガーがアメリカで1ドル、日本で100円
  2. 2015年1月1日のハンバーガーがアメリカで物価が上昇して2.5ドル、日本では変わらず100円※

だったとします。

※日本での物価も変るとややこしいので、仮に日本の国内で全く物価の上昇や下落がなく、100円の価値は変わらなかったと仮定します。

貴方がアメリカに旅行に行ってハンバーガーを購入する場合、

100円で2ドルに両替が出来ます。 しかし、2ドルではハンバーガーが買えません。

2014年はハンバーガーが100円で買えましたが、2015年はアメリカでハンバーガーを買おうと思ったら2.5ドル(125円)必要になります。

実質的に物価を考慮すると、100円で2.5ドル=1ドル40円だとバランスが良いので、「実質レートでみれば、円安(割安)」という発言になり、「今1ドル50円だけど実質40円」という意味合いになります。という事は、ドル円は下落に向かうでしょう。

このように、物価の変動までを考慮した為替レートを実質為替レートと呼んでいます。

実効為替レートとは

2つの通貨ペアの為替レートだけでは捉えられない、相対的な通貨の実力を測るための総合的な指標です。

分かりやすく言えば、円の実効為替レート=多くの通貨からみた円のレートです。

具体的には、対象となる全ての通貨と日本円との間の2通貨間為替レートを、貿易額等で計った相対的な重要度でウエイト付けして集計・算出しています。

現在、日本銀行は国際決済銀行(Bank for International Settlements、BIS)公表の、Broadベースの実効為替レートを利用しています。

日本銀行
https://www.boj.or.jp/statistics/outline/exp/exrate02.htm/
国際決済銀行
http://www.bis.org/statistics/eer/index.htm

実質実効為替レートとは

実質為替レート実効為替レート、2つの為替レートを組み合わせたものが実質実効為替レートです。

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左の紫の縦軸が普段見慣れているドル円の価格です。

右の縦軸が円の実質実効為替レートです。簡単に見方を説明すれば、100を基準に考えて↑上に行けば(数字が小さくなれば)円安を示します。

紫のラインチャートがドル円の値動きです。

黒のラインチャートが実質実効為替レートの推移になります。

現在2015年実質実効為替レートは70台を推移しています。
前回70台をつけた2007年は、実質実効為替レート80を割って70台に入り、その後急落、ドル円も円高に向かっています。
その前は1985年プラザ合意のあった頃までさかのぼらないといけませんが、70台でやはり下落。ドル円も円高に向かいましたが、この時の円高はアメリカに誘導されたので、ちょっと違うとは思いますが・・

実質実効為替レートという観点からは、70という水準はもういい頃だと思っている人は多いのだと思います。

仮に実質実効為替レートを国力と考えるのであれば、日本はかなり弱くなっているということですし、ドル円75円の頃と比べれば、私たちの資産価値はかなり目減りしています。
この点をおそらく黒田総裁は懸念を示しているのでしょうが、今回の円安に誘導したのは黒田総裁本人であることは事実です。また、株価が実際に上昇したのも事実です。
これからも黒田総裁が、消費者物価2%にこだわるようでしたら、原油価格の上昇を待つか、あるいはドル円140円超まで行かない達成は難しいのではないでしょうか?
個人的には、2%にこだわる必要はないと思っているのですが・・・

もちろん、過去のチャートが示すように、ここで反転し円高に再度向かうのであれば、ドル円120円を割れれば株価も大きく下落し、日銀やクジラと言われている本邦御上勢が買った外貨資産や株なども含み損が出て、年期金などが払えず、大変なことも考えられます。

上サイドも下サイドも、どちらも日本はリスクを抱えた状態なのです。