colums先週111円40銭手前まで上昇したドル円でしたが、3日と持たずに今度は大幅下落となりトランプ大統領の米朝首脳会談中止宣言を受けて瞬間的に109円を下押しするところまで下落が進みました。

ただこの一連の上昇といきなりの反転下落はどちらも酷く急な動きであり、毎日相場を見ている個人投資家にとっては今一つ納得のいかない動きになったことは事実のようでそれなりに相場の上下動でけが人が出たものと思われます。

こうなると週明けどのように相場が動いていくかが気になるところですが、ここまでの動きにはヘッジファンドや投機筋のアルゴリズムが深くかかわっていたことが徐々に明らかになりつつあります。

111円台への上伸はLIBOR上昇によるファンド勢の売り持ち解消が原因

ここのところほぼすべての通貨に対してドル高が進んだことは確かですが、この上昇にはLIBOR金利が上昇したことでドル円のショートをコスト的に維持できなくなったヘッジファンド勢が解消の買戻しをかけたことが上昇のきっかけとなったことは先週のコラムもご説明したとおりです。

その動きを察知したCTAのトレンドフォローで反応するアルゴリズムが追い打ちをかけるように過度に買い上げたことから先週前半は111円台中盤に近づくところまでオーバーシュート気味に上昇することとなりました。しかし当然ショートカバーの動きが起因しているわけですから高値で買いあがる向きもなく、相場は111円台を三日維持することなく下落してしまったようです。

下落の原因もCTAのアルゴリズム

一方23日東京タイムでは110円台後半からスタートしたはずのドル円は仲値終了後からどんどんと下落し110円50銭をあっさり割り込んでからその下落が一層加速することとなってしまいました。メディアなどの報道では米朝首脳会談が開催されないかもしれないといったトランプ発言が重しになったという説に咥え、トルコリラが対ドルで大きく崩れだしたことでクロス円全般が弱含むこととなりそれがドル円にも影響を与えたという後講釈がでましたが、実際それだけの材料で109円台中盤まで下落することは考えられず、多くの市場参加者がクビをかしげることとなりました。

しかしどうもこの下落の動きもトレンドフォローで作動するCTAのアルゴリズムが売りを加速させ、つぎつぎと下値にあったストップロスを誘発することで一気にドル円を1.3円近く下落させてしまったのが原因となっているようです。
もちろん為替相場は複合的な材料で動きますから決定的な理由を解明することはできませんが、こうしたAI実装のアルゴリズムは人が裁量取引で感じる高値感や安値感といったものを一切廃して短い時間足でもトレンドが出れば躊躇なく買いあがり、また逆に下がり始めればいきなりドテンして売りに回るという極端な取引を行うことから相場はどうしてもオーバーシュート気味に展開することがわかり始めています。
こうした相場状況はひと昔前には見られないものでしたが、今ではAI主導の売買となっていることからより顕著な動きがみられるようになっており、その場でトレードをしている裁量取引の個人投資家は何が起きたかわからずに結局損切だけ余儀なくされて資金を失う大きな原因になりはじめているようです。

急激な上昇、下落はすぐに反転し易くなることに注意

このCTA系のアルゴリズム取引はとにかく一方向に一定量相場が動くとそれについていくことになるため上げも下げも大きく動きやすく、その動きにしっかりついて行かれれば何に問題もありませんが、戻り売りでも買い向かいでも逆ばりで対応するとどうしても失敗し易くなるようで相当注意が必要になります。その一方で短期間に急激に上昇したり下落したりした相場は突然反転した動きになることも多く、急上昇や急降下に単純についていくのもそれなりの用心が必要です。ロングポジションを持っている場合にはトレーリングストップなどを駆使して必要以上に損失を負わないようにする努力を欠かさないことが肝要ですが、正直なところ相当難しい相場展開になってきているようです。
投機筋は目下ユーロドルの売りに集中しているようで、ユーロ円の下落が強まるとドル円もその流れに巻き込まれて下落するリスクが高まりますので、ユーロの動向にも目をくばりながら対応したい一週間になりそうです。

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ドル円を日足でみますと3月末から上昇してきたトレンドラインを既に割り込んでいますが通常トレンドラインは11週(55日)以上経過したラインを結んでいないと正確にはワークしないとも言われており、ここから戻りを試すことになると上昇トレンドが続く可能性も残っていますので迂闊な売りをするよりも週明けの動きを確認してからエントリーの方向を決められることがお勧めとなりそうです。
また108円前半には今頃になって武田のM&A絡みのドル買いがリーブオーダーとして並んでいると情報もあり簡単に大きく下がらないことも想定されます。となると一時的にレンジ相場を形成して日柄調整に入りながら6月中盤のFOMCを待つことになることも考えられます。いずれにしても足元では方向感を失っていますで、どちらの方向に動き出すかをしっかり見極めてから取引きに参入しても遅くはなさそうです。