山手敏郎
先週の市場ではトランプ政権対中関税を引き下げる可能性が議論されたなどとウォールストリートジャーナルが報じたことから株もドル円も大きく上昇することとなりましたが、その後財務省から否定的なコメントがでるなど市場はメディア報道に振り回される状況となりました。

しかし18日にはまた中国が対米貿易不均衡の6カ年是正計画を提示すると報じられたことから週明けキング牧師の誕生日で3連休であるにもかかわらず株が大幅に買い上げられたことからドル円も上昇する動きとなっており、110円台に回復できるかどうかが大きな注目点となってきています。

1月末からの米中交渉はライトハイザーが中心になって展開

株式市場も為替市場も1月末に開催される劉鶴副首相とUSTRのライトハイザー代表らと閣僚級の貿易協議の進展をかなり期待しているようですが、どうも状況はそんなに甘くなさそうで、市場の期待があっさり裏切られる可能性が高まりつつあります。

ライトハイザーと言えば日米の貿易協議にも登場することが決まっていますが、これまで対中貿易交渉ではウィルバー・ロスやムニューシンなど
が中心的役割を果たすなど、交渉毎に登場人物が変わるといった状況が続きましたが、今回からはトランプから通商交渉でもっとも信任が厚いといわれるライトハイザーが全てを取り仕切ることとなり、中国にとってはかなりのハードネゴシエーションとなることが予想されます。

トランプ自身は貿易赤字解消といった単純かつ短期的な問題解決を求めているようですが、ライトハイザーは中国の国家資本主義に基づくこれまでの不公正な貿易慣行の徹底的な是正を強く求めていく意向である点が注目されます。

中国側としては構造的問題の改革をつきつけられないために輸入自主拡大など比較的短期的に貿易赤字の改善に寄与するような内容だけをメディアにも示唆し続けていますが、こうした大きな齟齬が明確になった場合交渉はかなりもめることも考えておく必要がありそうで、協議で合意が見られないと、米国政府は対中輸入品に課す関税率を3月1日から現行の10%から25%へ引き上げることになり、両国の経済をさらに圧迫することになりかねないだけに予断を許さない状況になっているといえます。

ここのところアルゴリズム主体で売買されることが多いためか、報道のヘッドラインで比較的楽観的な内容が伝わると必要以上に相場が買い進まれる傾向が株にも為替にも顕著に表れており、結果がそうならなかった場合には売り戻されるリスクが強くなっている点には相当注意が必要です。

ドル円は110円から上は相当重い展開に

ドル円は昨年の売買経緯からみて110円から上は相当重い展開が予想され、投機筋などが延々と保有しているポジションもまだ残っているとされているだけに週明けからどんどん円安が進むかどうかはかなり疑問な状況になりつつあります。

また109円台後半では実需の売りも相当厚くなってきていますから3月末にむけても相当上値は重そうな雰囲気が強まっています。

最新の日銀の短観によると輸出企業の想定為替レートはちょうど足元のレベルに近い109.400円レベルとされていますからそれを超える水準ではどうしてもドル円の売りが積み上がるリスクがありそうです。

さらに年度末を迎えた海外からの円でのレパトリ需要もここからは強まる時期にさしかかりますので、ドル円にとっては上値を抑える材料がかなり豊富な時間帯にさしかかる点は意識しておくべきでしょう。

さらに米国の政府機関の閉鎖で若干開催が遅延している日米の貿易交渉も月末から本格スタートの予定で上述のライトハイザーがこの交渉にも登場し為替条項の盛り込みを日本政府に迫る可能性はかなり高く、トランプからも円安に対する不満がツイートなどされた場合にはいきなり円高に押し戻されるといった可能性も十分に勘案して売買していくことが必要になりそうです。