山手敏郎
ドル円は先週一週間ある種の膠着状態で109円台を上下するだけで上に抜けるわけでもなければ下に下落するわけでもないほとんど動かない相場を延々と繰り返すことになりました。

2915年8月24日に中国人民元ショックでフラッシュクラッシュが起きたときも、その後相場が戻してから延々と1か月半程度膠着したところで10月15日に再度二番底を試しにいく展開がありましたが、この年明けのフラッシュクラッシュの膠着相場もこれとほぼ同様の動きになっている点が非常に気になります。

2015年8月のフラッシュ時の動き
2015年8月のフラッシュ時の動き ドル円日足ベース

さて、御覧いただいているチャートは2015年8月24日に暴落がおきてからあとのドル円の日足の推移ですが、この時も116円台初頭までいきなり下落した相場は直とに121円台まで戻し暴落直前レベルまで値を回復しています。

しかしその後はそれを一度として超えることができないままに上下動を繰り返すようになり10月に入るまで上下に髭をつけながら推移していたことがわかります。今年のドル円の動きもここまで見てきますとかなり似たような雰囲気を醸成しており12時間足のチャートで比較してみますとかなり形状が似始めていることがわかります。
ドル円12時間足
ドル円12時間足 年明けから足元まで

危険なのは米中首脳会談の結果を受けた相場

米国は14~15日にムニューシン財務長官やライトハイザーUSTR代表らを交え北京で閣僚級協議を実施する旨を発表しています。昨年12月の米中首脳会談では90日間のいわば停戦となった形で年を越したわけですが、いよいよその期日となる3月1日の関税の実施を踏まえて最終的な交渉を行うことになるわけです。USTRのライトハイザーは日本ではレーガン政権時の鉄鋼交渉のときに来日して日本サイドとの交渉にあたったことでも知られる凄腕の弁護士で、当時は日本の役人が差し出した弁明の書類を紙飛行機に折って飛ばしたという嘘か本当かわからない逸話までもったハードネゴシエーターとして知られています。

トランプは貿易赤字額が当座激減すればひとつの成果と考えているようですが、この1月から米国側の責任者となったライトハイザーはとにかく知財をはじめとする構造的問題が解決するまでは折れないとしていますから、知的所有権関連で交渉に進展がなかった場合いきなり3月1日から高率関税を中国製品に適用するリスクは依然として高く、この交渉が物別れになった時点でドル円も大きく円高にシフトする危険性をかなり認識しておく必要がありそうです。

ドイツがリセッション入りリスク上昇でユーロはこれ以上上昇しない

先週発表されたドイツの12月の製造業受注指数は前月比1.6%低下となり、これで2か月連続の低下となりました。10~12月・第四四半期の指数もマイナス成長は確実のようでリセッション入りが確定することになればユーロはこれ以上ドルに対して上昇する材料を失うことになります。
欧州圏ではドイツ経済が沈没してしまうと域内全体で景気が大幅にダウンしてしまうリスクがかなり高まることから、欧州起因で相場が大きく下落するリスクもいよいよ考えておく必要がでてくる時間帯にさしかかってきています。

FX市場では消去法的にドルが買われる展開となっていますが、リスクオフになれば引き続き円が買われやすく、またクロス円でも円が大きく買われやすい地合いが続きますので、今週もドル円、クロス円ともに下方向のリスクを常に意識した取引が必要になりそうです。
とくにドル円は110円から上の実需と思われる売りが想像を絶する規模になってきており、先週も後半はほとんど滞留していられないほど戻り売りが強くなっている点は注目されるところで、上方向へ上がるのは今のところ至難の業の状況になりつつあるようです。