日銀マイナス金利導入で2月相場はどうなる?

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表①:1月29日 ドル円 5分足(赤:陽線 青:陰線)

月末、週末の1月29日、日銀が手を打ってきました。実際の会合の結果は12:39に公表されたものの、12:24に日経新聞から、「日銀、マイナス金利導入を議論」と一報が流れたことで、ドル円は119円をブレイク。

その後、東京市場後場がオープンし、前場のマイナスから一転、プラスに切り替えし、そして、会合の結果が明らかになると、121円40銭台まで上昇しました。しかし、日経平均が、17600円台から16700円台まで急落すると、ドル円も118円66銭まで急落。

そして、再び上昇と、乱高下の昼時となりました。往復ビンタをもらった方もいると思います。

サプライズ好きの黒田総裁とはいえ、国会等であれだけマイナス金利は考えていない、と言っておきながら、今回導入したことには驚きでした。(やっぱり、タヌキおやじですね~)

特に、日本は銀行等の金融機関での預金が低金利にも関わらず、国民性なのか、安定性を求めるため、大変人気なので、私個人は、マイナス金利はあり得ない、と思っていたので、12:24に日経から一報が流れても、買い(HIGH)のポジションを持つことができず、発表後に相場を追っかけてしまいました。

実際、日銀の決定会合もこの件に関しては意見が真っ二つに割れて、マイナス金利の導入を賛成5反対4で、押し切った形です。
会合内容を知りたい方は、こちらから↓(日銀 ホームページ)
「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」の導入
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2016/k160129a.pdf

マイナス金利になると、どうなるの?

現在、民間銀行は日本銀行に年利0.1%の金利で当座預金にお金を預けていますが、今後(2月16日~)、日本銀行の当座預金の年利が-0.1%になりますので、銀行は日本銀行にお金を預けると、利息を受け取るのではなく利息を払うことになってしまいます

ですから、銀行は、別のものに投資又は貸出・運用することを考えざるを得ないため、市場にお金が更に回る可能性(期待)がある、ということになります。

発表で大きく動いた株

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表②:三菱UFJフィナンシャルグループ 1月29日 株価

これによって、銀行は今までの利益の上がる場所を剥奪されたわけですから、金融株は日銀の発表を受けて下落しました。
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表③:三菱地所 1月29日 株価

一方、金利が下がったことで、住宅ローンが下がる可能性があり、また大きなお金を必要とする不動産株は上昇しました。
このように、今回のマイナス金利導入は、経済全体にメリットがあるというわけではないことがわかります。

また、金利が下がることによって、更にお金を借りやすくなるのは確かですが、問題は、皆がお金を現在借りたい状況なのか、設備投資をしたい状況なのか、ということです。現在10-12月の決算が毎日発表されていますが、残念ながら、日本は停滞からマイナスの状況です。(アメリカも同様です。)要するに、現在は銀行からお金を借りて企業が積極的に攻める時期ではない、ということです。

よって、今後、金融機関の収益悪化が懸念されます。

私たちの大事な預金は?

私たちが銀行に預けている預金の金利はどうなるのでしょう。普通に考えれば、私たちの預金も銀行から利息を受け取るのではなく、利息を銀行に支払うことが考えられます。ただ、現段階では利息を支払うことにはならないでしょう。先ほどもお話ししたように、日本は、銀行に微々たる利息でもお金を預けておくことが安心、と考えられていることから、金融機関がお客に対してマイナス金利を導入することは難しいでしょう。
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表④:現行の100万円未満の定期預金金利

しかし、日本銀行が政策金利を引き下げたことは事実ですから、今後、更に民間銀行が普通預金、定期預金ともに金利を引き下げすることが考えられ、銀行はただの金庫代わりとなるでしょう。

今後更にマイナス金利の幅を広げるようなことになった時は、もしかしたら実際に私達顧客が銀行に利息を支払わないといけない時が来るのかもしれません。

現在マイナス金利を導入している国は、スウェーデン、スイス、デンマーク、そしてユーロ圏、などがあります。例えば、デンマークでは、銀行が大口の預金者から利息を受取たり、消費者が住宅ローンを組んで、お金を借りると、逆に利息がもらえる(実際は、ローン返済時に利息分をマイナスする)、普通では考えられないことが起こっています。

大口預金者が利息を払うというのは、口座維持手数料みたいな感覚なのでしょうね。私も経験ありますが、お金預けていて、勝手に私のお金を銀行に引き出され、物凄く不愉快な思いをしたことが過去にあります。やっぱり、日本人には、向かないシステムだと思います。

為替には、どう影響するの?

さて、本題の為替に対する影響はどうなるのでしょう。
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表⑤:1月29日 ドル円 時間足(赤:陽線 青:陰線)

ドル円だけに注目すれば、1月は米国が利上げを行いませんでしたが、日本が利下げしたことによって、日米金利差が拡大したわけですから、円売りドル買いで反応するのは当然のことでしょう。
ただ、29日金曜日の東京市場大引け後(15:00以降)のドル円の上昇は、東京市場後場のドル円の上昇と同じものではない、と考えられます。具体的に言えば、東京市場後場のドル円の上昇は円売りによるドル円の上昇で、15:00以降のドル円の上昇はドル買いによるドル円の上昇だということです。
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表⑥:1月29日 ドルインデックス 時間足(赤:陽線 緑:陰線)

29日のドルインデック1時間足を見ると、12:00の長い上ひげを引いているところが、マイナス金利の発表があった時間ですが、その後も堅調にドルが上昇しているのが分かります。株価も日本はもちろんドイツ、英国、ニューヨークと大きく上昇して終わっているので、リスク先行の相場でした。
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表⑦:1月29日 豪ドル円 時間足(赤:陽線 青:陰線)

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表⑧:1月29日 豪ドルドル 時間足(赤:陽線 青:陰線)

それにも関わらず、株価に敏感な豪ドルが、豪ドル円では15:00以降横ばい、豪ドルドルは15:00を天井に下落しています。NZドル米ドルも、ユーロドルもポンドドルも、みな同じ傾向にありました。これらのことから、ドル買いが強かったことが分かります。
前営業日29日が、月末、週末であったことから、実需のドル買い需要でこのようなことになったのかもしれませんが、個人的には、今回の円売り・ドル買いの寿命は短いのかもしれない、と思っています。
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表⑨:ドル円 月足(赤:陽線 青:陰線)

ただし、1月あれだけ下落したドル円が1月月足を、下ひげ陽線で完成させたことは事実ですから、売り(LOW)から入るのは難しく、また買い(HIGH)からも入りたくないので、少し、ドル円は様子見したいと思っています。
クロス円は、先ほど紹介した豪ドル円のように、ドル円の上昇と豪ドルドルの下落で、米ドルが上下に引っ張りあいをする可能性があるので、方向感が出にくくなると思われ、これも様子見。
今週はドル円以外のドルストレートで頑張ってみたいと思います。

2月相場はどうなる?

さて、今週から2月相場となりますが、2月は節分天井というアノマリーを良く聞きます。
節分のある2月上旬に高値をつけて、お彼岸の3月中旬頃に安値をつけるというものです。
ここ10年間の日経平均とドル円の2月の月足を調べてみると・・

2015年2月 日経平均月足 陽線  ドル円月足 陽線
2014年2月 日経平均月足 陽線  ドル円月足 陰線
2013年2月 日経平均月足 陽線  ドル円月足 陽線
2012年2月 日経平均月足 陽線  ドル円月足 陽線
2011年2月 日経平均月足 陽線  ドル円月足 陰線
2010年2月 日経平均月足 陰線  ドル円月足 陰線
2009年2月 日経平均月足 陰線  ドル円月足 陽線
2008年2月 日経平均月足 陽線  ドル円月足 陰線
2007年2月 日経平均月足 陽線  ドル円月足 陰線
2006年2月 日経平均月足 陰線  ドル円月足 陰線

日経平均は、陽線7回、陰線3回と上昇することが多く、ドル円は陽線4回、陰線6回と、このアノマリーは現在、あてになりにくいことがわかります。

ドル円の月足は先ほど見ましたが、再び上昇トレンドに入ったというよりも、下落基調から横ばいに入ったという感じです。
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表⑩:ドル円 週足(赤:陽線 青:陰線)

ドル円、週足は、今も一目均衡表雲の中でもみ合い。
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表⑪:ドル円 日足(赤:陽線 青:陰線)

ドル円日足も、再び雲の中に入ってきて、200日移動平均線の上に一時抜けたものの、再び下に潜り込み、雲上限と200日移動平均線2つ壁が上昇を阻んでいる感じです。
今週、木曜日から金曜日がチャート上の転換日となり、また金曜日が米国雇用統計の発表日でもあるため、上下どちらに行くかは分かりませんが、注意したいと思っています。

また、今週は株が上昇を続けるのかにも注目しています。月曜日は上昇してスタートすると思われますが、仮に株高が続くようであれば、ドル円も買われ、日本株の半分以上を保有している外国人がヘッジでドル円を更に買い、ドル円上昇を後押しするでしょう。
穿った見方をすれば、今回金利を日銀がいじったことで、3月は日銀が量的緩和を、米国の利上げとセットで行うかも?との期待も外国人投資家は持つかもしれません。

逆に私が考えるように、株がどんどん上昇を続けることはない、というシナリオであれば、ドル円は、チャートが示す通り一旦踊り場に入り、再び下落基調となるでしょう。
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表⑫:ドルインデックス 週足(赤:陽線 緑:陰線)

また、ドルインデックスも100に近い水準で横ばいを続けていることから、どんどんとドルが買われる時合だとは思えません。

今週も変動幅の広い相場展開になると思われますので、気をつけてトレードしてください。