管理人さん
禁じ手 ヘリコプターマネーを期待するマーケット

えっ、また?政府・日銀への過剰期待による円安・株高

という事でコラムです。

新規国債の追加発行検討のニュースとヘリコプターマネー

7月10日の参議院選挙が終わり、翌日月曜日から急にマーケットが動き出しました。正直、これほど動くとは思いませんでしたが、政府の財政出動と月末に行われる日銀金融政策決定会合への期待から円安・株高の動きとなりました。もちろん、ポケモンGOの効果も忘れてはいけないですね!

2016.07.11日経新聞-首相、12日に経済対策指示 新規国債の追加発行検討
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS11H0Y_R10C16A7MM0000/?dg=1&nf=1

この日経新聞電子版がアップされた時を同じくして、バーナンキ元FRB議長が日銀を訪れ、黒田総裁と1時間半ほど会談を持ちました。
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バーナンキ元FRB議長は、翌日には安倍総理と官邸で会談を行いました。会談冒頭で安倍首相は「デフレからの脱出速度を加速したい」と述べると、バーナンキ元FRB議長は「デフレ脱却が完全になり、健全な日本経済が本格的に戻るよう期待している」と応じたそうです。

何故このタイミングでバーナンキ元FRB議長が来日されたかはわかりませんが、「新規国債の追加発行検討」の報道のタイミングといい、マーケットはいわゆる“ヘリコプターマネー”について話し合われたのでは?という憶測・期待先行で、ここまでマーケットを押し上げてしまったのでしょう。

ヘリコプターマネーって何?

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1969年にノーベル賞経済学者のミルトン・フリードマンが論文の中で提唱したものですが、最近はヘリコプターマネーと言えば、バーナンキ元FRB議長といった感があります。

ヘリコプターマネーとは、ヘリコプターからお金を撒くこと、要するに「ばら撒き政策」のことを指しています。今までにも日本はいろいろな形でばら撒き政策を行っていますが、今回取り上げられているヘリコプターマネーは今までとは少し様相が違うのです。

今回取り上げられ注目されている点は、無利子永久債(利息の全く付かない、期限のない国債)を発行して、それを日銀がすべて買い取り、そのお金を市中にばら撒こうとする案です。政府が利息を全く払う必要も返済の義務もないわけですから、政府は債務を負うことなく、商品券や地域振興券、公共投資、子ども手当、現金などをばら撒くことができるのです。今までのばら撒き政策は、ばら撒く財源を確保するため、結局増税により国民や企業に負担をさせていたわけですが、今回はこの点が大きく違います。

また、為替介入マイナス金利、円安誘導の金融緩和とは違い、国民へのばら撒き政策は国内政策であり、他国から批判される必要がない点がメリットでもあります。

このばら撒きを国民が利用することにより、消費活動が活発になり、物価が上昇し、デフレが脱却できる、というシナリオを描いているのです。しかし、リスクとしてはハイパーインフレの可能性があると同時に、通貨“円”の信用が損なわれることになり、円安がどこまで進むかわからない状態に陥る可能性もあるのです。
また、このばら撒きがリスクのあるばら撒きだと国民が理解すれば、将来のために使わずに貯蓄にまわす可能性もあり、思惑通りにいくかは、わからないのが実情です。

今年はアイルランドが100年債を発行、昨年はベルギーが1世紀債を発行、メキシコは2010年に償還期限が2110年の100年債を発行しています。購入者が既に生存していない時に償還を迎える国債発行が世界でも実施されていて、とても馬鹿げた話のように思えますが、「孫のために購入した」など結構売れているという話も聞いています。しかし、その孫も償還前に既に亡くなっていて、受取ることができないかもしれないですね。

今回日本で噂される、新規国債を全て日銀が買取る、いわゆる“財政ファイナンス”(日銀が政府へ資金を供給することで、政府の厳しい財政状況を日銀が直接協力すること)を行うことは、まさに打出の小槌であり、日銀頼みのマネー供給に歯止めが掛けられなくなる可能性と、ハイパーインフレを引き起こす恐れがあるため、実は財政法・日銀法で現在は禁じているのです。

なぜなら以前日本は関東大震災による震災恐慌、その後の世界恐慌・昭和恐慌に苦しみ、デフレ脱却のため、積極的に国債を増発しては日銀に買取らせることで、デフレからは脱却したものの、物不足も手伝って恐れていたハイパーインフレに進んでしまった過去があるからなのです。“歴史は繰り返す”まさに、今そこへ足を踏み入れようとしているのです。

2.26事件で暗殺された高橋是清と日本で国債発行のお話

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日本で国債発行と言えば、この人物しかいないでしょう。

高橋是清です。歴史の授業で「2.26事件で暗殺された」と勉強しましたよね。実はこの2.26事件と国債発行は間接的に関係があるのです。

高橋是清は、犬養内閣時に、大蔵大臣として登用されました。現在と同じように円安政策を採るものの、デフレは克服することができず、日銀による国債の購入を積極的に増やしました。しかし、それでもデフレは克服することができなかったため、日銀が全額引受けの国債発行に踏み切ったのです。

この政策によってインフレと軍事費拡大の道へ日本は進むことになります。

本当に、現在の日本とよく似ていますよね。

そしてインフレが進んだことを確認し、今度はインフレを抑えるために当然の如く、市中に出回っているお金の量を減らす、引締めの政策を高橋蔵相は取り始め、もちろん軍事費も削減対象としました。もともと陸軍の予算は海軍の予算の10分の1とも言われており、一律に削減しようとした高橋蔵相の政策に一部の陸軍部隊が反感を抱き、2.26事件での暗殺の一因となるわけです。

ちなみに、高橋是清は総理大臣、日銀総裁も務めたことのある偉大な人物です。

その後、日本は太平洋戦争・第二次世界大戦の道へと進み、敗戦と物不足、ハイパーインフレに苦しむことになります。

このよく似た現状で・・

この物価の上昇しないよく似た現状で、いや安倍首相、麻生大臣、黒田総裁は、あの当時を既に模倣しているのかもしれませんが、現在は、財政法の第5条や日銀法の34条で、日銀による国債の引き受けを禁止しています。ですから、黒田日銀総裁は、ヘリコプターマネーの実施について国会での質疑やマスコミのインタビューで質問を受けると「法的枠組みと矛盾する」と否定をしています。

政府からも菅官房長官が「ヘリコプターマネーを検討している事実はない」と鎮火させようと否定しますが、逆に火に油を注ぐように「永久国債の発行にバーナンキ氏が言及-本田悦朗氏の4月訪米時に」とまたもやブルームバーグが余計なことを報じ、今月末の日銀金融政策決定会合で必ず何かやってくれるだろうと催促相場へと繋がってしまいました。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-07-14/OAA6J96JIJVB01

ブルームバーグが先走って勝手に期待・勝手に落胆パターンって前にもありましたよね・・ わざとやっているのでしょうか。

「2度あることは3度ある?」それとも「3度目の正直?」か・・

1月、4月と3か月ごとに日銀には期待を大きく裏切られているわけですが、今回また3ヶ月後の7月、日銀金融政策決定会合はどうなるのでしょうか?今回も期待外れとなるのか?、それもと「3度目の正直」で大きく上昇するのか?、今から楽しみです。

個人的には「2度あることは3度ある」と思っていて、ちょっと市場が期待をし過ぎなのではないでしょうか?

日銀は、今回の決定会合で、国債引き受けはありえないですし、経済対策も石原大臣の話を聞いている限り、安倍総理の見切り発車の発言で、期待外れの対策になるのではないかと思っています。ですから、基本的には戻り売りで待ちたいと思っています。
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ドル円 日足(赤:陽線 青:陰線)

ドル円日足は移動平均線もMACDもゴールデンクロスを形成し、買いサインに替わっています。
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ドル円 週足(赤:陽線 青:陰線)

週足を見ると、引き続き下降トレンドが続いており、200週線と転換線にしっかりと上昇を抑えられています。
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ドル円 月足(赤:陽線 青:陰線)

月足を見ると、月足のピッチが速いと先週指摘をしましたが、先週5か月移動平均線付近まで調整の上昇をしたことで、新しい材料が出てこない限り、上昇も一旦これで終わったのでは?と考えています。28・29日の日銀金融政策決定会合までは、幅は広いですが100円-107円のレンジで推移するような気がします。

下落トレンド終了は108円台にローソク足の実体部分が乗ってきた時だと思っています。