ヘリコプターマネー(ヘリマネ政策)とは?メリットとデメリット
管理人さん

ヘリコプターマネー(ヘリマネ)政策という言葉をご存知でしょうか?

コロナウィルスの影響で、経済へ国民が関心を持つようになり、「お金を刷ればよい」という論調も出てきました。 正にヘリコプターからお金をばら撒くような政策を、ヘリコプターマネー(ヘリマネ)政策と呼ぶので丁度良いと思い、再編集してみます。

ヘリコプターマネーとは

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ヘリコプターマネーとは、ヘリコプターからお金を撒くこと。 要するに「ばら撒き政策」のことを指しています。

アベノミクスでここ数年間、日本はいろいろな形で実はお金が国民に回るような政策を行っていますが、特に派手にばら撒くような政策をヘリマネ政策と呼びます。

ヘリマネ政策といえば

1969年にノーベル賞経済学者のミルトン・フリードマンが論文の中で提唱したものですが、最近はヘリコプターマネーと言えば、アメリカのバーナンキ元FRB議長の政策というイメージもあります。

ヘリマネ政策のメリット

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ヘリマネ政策のメリットは、基本的には金融緩和政策と同じ理屈です。

仮に本当に空から国民にお金が降ってきたとします。

貴方がA社で買い物をすればA社にお金が入り、A社はB社から物を買い、B社はC社から物を買ったり従業員のお給料が上がり、従業員がまた買い物をして・・景気が良くなる事で、貴方が務めている会社の売り上げも上がり、給料が上がり、お金に余裕が出来てD社で買い物をします。

経済が回って景気が良いというのはこういう事です。

ばら撒いたお金を国民が利用することにより、消費活動が活発になり、物価が上昇してデフレが脱却できる。

というシナリオです。

コロナ対策におけるヘリマネ政策

2020年のヘリマネ政策案は、自粛する為に、仕事をしない。 しかし家賃を払う必要があるのでお金が欲しいという論調なので、100%経済対策というわけではありませんが、基本的に自粛対策にもなるので経済対策にもなりいい事ずくめのように思えます。

良い事しかないようにも思えますが、デメリットを理解しなくてはなりません。 メリットは分かりやすいのですが、デメリットが実は分かりづらいのが経済です。 だから皆口をそろえて「金を刷ればいい。」と言いがちなのです。

ヘリマネ政策のデメリット

お金(円)を市場にばら撒く事で、そのお金の価値が下がります。 これがデメリットの原点です。

極端な話、各家庭に10億円が配られたら一生安泰でしょうか? いえ、そうはなりません。 お金は捨てる程、皆持っていますから100円のジュースが1,000円でも売れるようになります。10億なら1万円でも買うかもしれません。 円という通貨の価値が下がり、歯止めが効かなくなります。

ヘリマネ政策のリスクはハイパーインフレの可能性があると同時に、通貨“円”の信用が損なわれること、そしてその円安がどこまで進むかわからない状態に陥るという事です。

また、お金をばら撒いた所で現在は自粛中。 将来の不安から使わずに貯蓄にまわす可能性もあり、思惑通りにいくかはわからないのが実情です。

実際、アベノミクスで市場にお金は回っているはずなのに、リーマンショック・バブル崩壊の経験からか日本国民はお金をあまり使わずに内部留保という形で貯蓄として貯まっていくだけでした。

既にお金のバラ巻きはやっているのに思惑ほど経済が回っていない状況だったのです。 一昔前にアンケートで「アベノミクスで経済が良くなったか」という質問に「そうは思わない」という答えが大半だというニュースがよく流れていました。この時に批判をしていた人が、今は逆の批判をしているという構図なのです。

実際に麻生大臣はこの事で「せっかくばら撒いたのだからもっとお金使え!!」って怒ってました。 ですから、このタイミングで思い切ってヘリコプターからお金をばら撒いた所でさして効果は無いとみるのも無理はありません。

ちなみに、ばら撒いたお金が企業に溜まっている状況を内部留保といいます。

これまでのヘリマネ政策例

2016年はアイルランドが100年債を発行、昨年はベルギーが1世紀債を発行、メキシコは2010年に償還期限が2110年の100年債を発行しています。購入者が既に生存していない時に償還を迎える国債発行が世界でも実施されていて、とても馬鹿げた話のように思えますが、「孫のために購入した」など結構売れているという話も聞いています。しかし、その孫も償還前に既に亡くなっていて、受取ることができないかもしれないです。

2016年に日本で噂されていた、新規国債を全て日銀が買取る、いわゆる“財政ファイナンス”(日銀が政府へ資金を供給することで、政府の厳しい財政状況を日銀が直接協力すること)を行うことは、まさに打出の小槌であり、日銀頼みのマネー供給に歯止めが掛けられなくなる可能性と、ハイパーインフレを引き起こす恐れがあるため、実は財政法・日銀法で現在は禁じているのです。

なぜなら以前日本は関東大震災による震災恐慌、その後の世界恐慌・昭和恐慌に苦しみ、デフレ脱却のため、積極的に国債を増発しては日銀に買取らせることで、デフレからは脱却したものの、物不足も手伝って恐れていたハイパーインフレに進んでしまった過去があるからなのです。“歴史は繰り返す”まさに、今そこへ足を踏み入れようとしているのです。

ヘリマネ政策の種類

ヘリマネ政策といっても、日銀がお金を刷って全国民に直接現金書留で送るという直接的で簡単な方法はあまりとられません。

2016年7月に案が出されたヘリマネ政策は無利子永久債(利息の全く付かない、期限のない国債)を発行して、それを日銀がすべて買い取り、そのお金を市中にばら撒こうとする案でした。

政府が利息を全く払う必要も返済の義務もないわけですから、政府は債務を負うことなく、商品券や地域振興券、公共投資、子ども手当、現金などをばら撒くことができるのです。 今までのばら撒き政策は、ばら撒く財源を確保するため、結局増税により国民や企業に負担をさせていたわけですが、この点が大きく違いました。

為替介入マイナス金利、円安誘導の金融緩和とは違い、国民へのばら撒き政策は国内政策であり、他国から批判される必要がない点がメリットでもあります。

ヘリマネ政策の失敗例である、2.26事件

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日本で国債発行と言えば、この人物しかいないでしょう。

高橋是清です。歴史の授業で「2.26事件で暗殺された」と勉強しました。

実はこの2.26事件と国債発行は間接的に関係があるのです。

高橋是清は、犬養内閣時に、大蔵大臣として登用されました。アベノミクスと同じように円安政策を採るもののデフレを克服することができず、日銀による国債の購入を積極的に増やしました。 しかし、それでもデフレは克服することができなかったため、日銀が全額引受けの国債発行に踏み切ったのです。

この政策によってインフレと軍事費拡大の道へ日本は進むことになります。

そしてインフレが進んだことを確認し、今度はインフレを抑えるために当然の如く、市中に出回っているお金の量を減らす、引締めの政策を取り始め、もちろん軍事費も削減対象としました。

もともと陸軍の予算は海軍の予算の10分の1とも言われており、一律に削減しようとした高橋蔵相の政策に一部の陸軍部隊が反感を抱き、2.26事件での暗殺の一因となるわけです。

ちなみに、高橋是清は総理大臣、日銀総裁も務めたことのある偉大な人物です。

その後、日本は太平洋戦争・第二次世界大戦の道へと進み、敗戦と物不足、ハイパーインフレに苦しむことになります。

このよく似た現状で・・

この物価の上昇しないよく似た現状で、いや安倍首相、麻生大臣、黒田総裁は、あの当時を既に模倣しているのかもしれませんが、現在は、財政法の第5条や日銀法の34条で、日銀による国債の引き受けを禁止しています。ですから、黒田日銀総裁は、ヘリコプターマネーの実施について国会での質疑やマスコミのインタビューで質問を受けると「法的枠組みと矛盾する」と否定をしています。

コロナショックの経済ダメージをどう脱却するか

コロナショックで受けた大きな経済ダメージの脱却は日本の場合単純にお金をばら撒けば良いという訳にはいきません。

そもそもこれまで地味に地味に、時にはマイナス金利を導入してまでアベノミクスでやってもなかなかスムーズには行っていません。

メリットも大きいですが、リスクを理解しないまま世論が高まるのは避けるべきでしょう。