管理人さん

為替の動きを解説する際、リスク回避という単語をよく耳にします。 世界同時株安や戦争のリスクなど情勢が悪くなった時に聞くリスク回避について解説します。

また、同時に「リスク回避の円買い」という表現もされるので何故リスク回避=円高に繋がるのかもまとめました。

リスク回避とは

言葉を聞いて、“良くない状況を回避する事”ということはわかると思います。

投資でこの用語が使われる場合は、世界同時株安や、テロ、戦争、政情不安、大きな自然災害、金融危機などの“良くない状況”が起きたときに、一旦投資していた資金を別のところや安全なところに移動したり、手仕舞うことを指します。

「リスク回避」「リスクオフ」等と表現します。

逆に、世界中が“よし、積極的に投資しよう”という時が「リスクオン」「リスクテイク」「リスク選好」と言われています。

リスクオンとリスクオフ(回避)のスピードの違い

心理的に、得をするよりも損をする方が人は嫌がる為、「リスクオン」のスピードよりも、「リスク回避」のスピードの方が速く、かつ空売りや売りからでも投資に参加できる金融商品は、更なる投機によってストップロスや投げを巻き込んで、よりスピードに拍車がかかる傾向にあります。

リスク回避の基本パターン

リスクオフの相場展開になった場合、基本的な行動としてはもちろん安全な所に皆逃げたいわけですから、安全な商品が選ばれ逃避先となります。

もちろん、一旦相場から退散することも当然の行為で、我々のような個人投資家であれば、騒ぎが治まるまで手元に資金を置いておくことも選択の1つです。

基本的なリスク回避のパターンとしては、債券が買われ、金(GOLD)が買われ、ドルが買われ、そして我々の円が買われます。

債券が買われる

もちろん、債券は格付けの高い安心な国債などが買われます。
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◎米国債10年債(利回り) 直近 日足チャート 8月21日まで(赤:陽線 緑:陰線)

上のチャートは、米国債10年債利回りのチャートです。以前のコラムでもお話ししたように、債券は利回りが低下すれば、債券価格が上がります。ですから、今回のリスク回避では、実際に債券が買われて、価格が上昇していることが分かります。以下が、債券価格のチャートです。
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◎米国債10年債(価格) 直近 日足チャート 8月21日まで(赤:陽線 緑:陰線)

価格を実際に見てみると、上昇していることが分かります。

このように、リスク回避の時には、安全な国債が買われます。

金(ゴールド)が買われる

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◎金(ゴールド)直近 日足チャート 8月21日まで(赤:陽線 緑:陰線)

皆さんお分かりのように、金は通貨ではないのですが、歴史で習った金本位制の名残から、紙幣の価値が無くなった時に、金だけは価値があるだろう、交換できるだろう、という昔からの安心感と、不動産のように燃えて価値がゼロになるということも考えられないので、リスクオフの時に一旦逃避先になることが多いのです。

ただ、金は持っていても利息は全くつきませんので、リスクオンの相場展開・世界的に景気が大変良い時は、売られて、人気の薄れる商品になります。
現在も一時的逃避先として金が選ばれていることが分かります。

円が買われる

ここ最近は、有事の円買いといって、円高傾向・円が買われる傾向にあります。

円が買われる理由は、「円キャリートレード」という言葉を聞いたことがある方もいると思いますが、金利の安い円を調達して、他の通貨・他の商品を買うという投資方法が長く世界中の投機筋に利用されていたため、リスクオフの時は、反対売買で円に買い戻すしか方法がないので、円が買われていました。

現在も、円が買われる理由は、この名残なのです。咄嗟の時は、皆冷静に行動することができず、円に逃げよう、という行動がどうしても出てしまうのです。

ですから、今でも「比較的安全な通貨とされる円が買われ・・」とニュースでは必ず言っていますが、あれはウソです。皆さんご存知の通り、円が安全な通貨であるわけがないですから。

もう一つ、リスク回避の時に円が買われる理由があります。それは、日本の海外投資資産が世界第1位だということです。

ですから、リスク回避場面では、どうしても手元に資金を置いておきたいのが心理ですから、海外から資金を回避します。2011年の大地震の時も、円は買われました。 普通に考えれば、円から逃避しないといけないのに。それくらい、日本は海外に資産があるということなのです。 ここ大事です。

ドルも買われる

米ドルは、世界の基軸通貨であることから「有事のドル買い」という言葉もあり、戦争や紛争などが起こった場合でも、最も流動性があり、安全資産として考えられています。

また、米国本土で、戦争が行われたことがなかったことも安全資産と見なされた要因の1つでした。しかし、9.11のテロでその印象は薄れ、「有事のドル買い」という以前の強い印象は薄れつつあります。

ドル円は、ドル/円なのでどちらも買われる事になります。 時代によって異なりますが、2017年現在はリスクオフ・・というと円買いの方が強く、ドル円は下落する傾向にあります。(2020年更新の現在も変わらず)

スイスフランも買われる

永世中立国であることから、特に中東・欧州で突発的な紛争やテロがあった場合に買われやすい通貨です。
ただ、スイスは、普段からスイスフラン高になりやすい通貨であるため、自国通貨防衛のために市場介入を行うので、今年2015円1月15日のスイスフランショック以降、スイスフランを買うことはリスクを伴うことを世界中に印象づけました。

2015円8月の世界株安に伴うリスク回避でユーロが選ばれたのは何故か

※この記事が最初に書かれたのは2015年8月で世界同時株安が起こっていました。 

今回の、リスク回避時の動きについて検証をしてみますと、1つ今までと違う動きがでました。

債券が買われ、金が買われたことは、上記でお話ししました。円が買われたことは、皆さんご存知の通りです。

しかし今回のリスク回避で特徴的だったのは、今までと違う逃避先として「ユーロ」が選ばれたことです。

なぜ、ユーロが選ばれたかといえば、先ほど円のところでお話しした同じことが起きているからなのです。
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◎ユーロドル 直近 日足チャート8月21日まで(赤:陽線 青:陰線)

流通量の多い3大通貨「ドル」「円」「ユーロ」の現在の金利を比較すれば、ドル>円>ユーロとなり、ユーロを調達通貨として、他の通貨や商品を購入して運用しているため、今回のリスク回避の場面では、ユーロが買い戻され、上のチャートのようにユーロが上昇しているのです。そのため、今まではリスク回避で買われていたドルが、反対取引で今回は下落したのです。

ですから、相場が落ち着きを取り戻せば、再びユーロドルは売られることになるでしょう。

以上のようなことが起きている時は、無理な逆張りトレードは、落ちてくるナイフを掴むような行為ですので、相場に沿ったトレードをするか、相場が落ち着いてから、トレードするようにしてください。