為替相場におけるハロウィンエフェクトとは
山手敏郎

10月も後半に入ってきて、BREXITはどうやら合意なき離脱だけは辛うじて回避できそうな状況となってきていることから月末の日米の中央銀行の政策決定会合まではあまり相場を動かす材料がなくなりつつある状況となってきました。 丁度ハロウィンの日に差し掛かる週ですので、為替相場における「ハロウィンエフェクト」という単語についても触れてみたいと思います。

先週末には米国USTRの関係者の話として米中の協議が順調に進んでいるといった内容が報道されたことで米株は一段と上昇をはじめており、このまま年末まで走りそうな雰囲気も出始めている状況です。

ただ、為替全般に関してみますとポンド以外はほとんど動かない状況で1日中相場に張り付いていても殆ど儲けにはありつけないというかなり厳しい時間帯に突入してしまった感があります。

日の値幅が25銭程度ではまともな取引は無理

ドル円は25日5~10日でしかも金曜日という、いわゆるゴトキンにあたりましたが仲値はたった10銭ほどしか動かず、その後のロンドンタイム、NYタイムを含めて一日の値幅はたった25銭程度という非常にトレーダー泣かせの相場に陥ってしまっています。

ドル円10月25日の動き 15分足推移
ドル円10月25日の動き 15分足推移

レンジ相場であればスキャルピングで対応してとにかく利益を積み上げるという方法ももちろん考えられますが、1回エントリーしても10銭稼げるタイミングが日通しで3回か4回ぐらいしかないとなるとそれもかなり難しく、長時間相場に向き合っているよりも仲値やLondon Fix、NYタイムの指標発表時を狙ってバイナリーオプションに賭けたほうがよほど効率がよさそうな相場になってきていることがわかります。ドル円はドル高円高、あるいはドル安円安が一緒にやってくることが多いことからほかのクロス円が動いても影響を受けない状態が続いており、非常にやりにくい相場が延々と続いています。
取引量が激減して困り果てた国内の店頭FX業者は競合他社から積極的に取引する顧客を引き抜くために10月中盤から原則0.2銭、さらに0.1銭という猛烈に狭いスプレッドをドル円取引に設定して客引きを行っているようですが、相場がこれだけ動かないとなるともはやスプレッドを狭くしたのでは解決がつかない状況に陥りつつあります。

ハロウィンエフェクトとは

例年、10月末に買って12月もしくは翌年4月ごろまでポジションを持ち続けると大きな利益を得ることができるというハロウィンエフェクトなどと呼ばれる取引のタイミングが今年も迫ってきています。

この取引手法は10月米株やドル円が毎年結構下落することから下値で買いを仕入れて年末の需要に向けて上昇を待つといった取引手法で、2000年からの過去19年間で見ますとドル円なら65%の確率、ニュージーランドドル円なら73%程度の確率で少なくとも年末までは上昇しています。

FRBは10月末のFOMCを前に短期のレポ市場の金利を安定させるために公開市場操作をして市場にドルをかなりの勢いで供給していますし、それとは別に月間で600億ドルの短期債の購入に踏み切っており、事実上の変則的なQEを実施しはじめていることからここへきてFRBの資産は急激に増加中です。
Data ZEROHEGDE
Data ZEROHEGDE

2008年のリーマンショック以降バーナンキ議長時代にFRBは3回の量的金融緩和・QEを実施していますが、資産の買入が進むときというのは必ず米株も上昇していることからこの政策が実施されたことで株価は簡単に下がらないという見方も強まっており、ハロウィンエフェクトの買いをかなりサポートしているようにも見えます。
ただ、リアルなドル円の相場を見ていますと、チャートとしては上方向を目指しそうには見えるものの8月一旦下抜けした週足レベルでの長期の三角持ち合いの中にまた相場の動きが戻っているだけでここから大きく上方向に抜けられるかどうかはまだ全くわからない状況が続いているのが実情です。
ドル円三角持ち合い
ドル円三角持ち合い

実際10月相場ではすでに107円台に下押しする場面もなくなってきていますので、ここから仮に10月末に買い向かってみても果たしてどれだけ上昇するのかが大きな問題になりそうです。実際109円を超えたあたりは本邦の輸出税がかなりの売りオーダーを並べているようですし、生保などの機関投資家はドル円が下がると買って109円に近づくとかなりの売りを出しているという情報も伝わってきています。あこうした動きはGPIFでも行っているようですから、ここからドル円が109円台中盤を簡単に上抜けて110円にまで到達することを短期に期待するのはかなり難しそうです。したがって今年は年末に向けて下値で買い向かっても上値が重くなれば利益重視でリカクしてまた次のチャンスを待つといった臨機応変の対応をかんがえた方が現実的なようです。寧ろ例年この時期の上昇確率が高いニュージーランドドル円を打診買いして様子を見た方が利益獲得の可能性が高まりそうにも見えます。

日米の中銀政策決定会合を経てどうなるか

今週の動きでいいますと注目点はやはりFOMCの政策金利結果発表と日銀の政策決定会合の結果待ちということになります。
今回のFOMCの利上げに関してはCMEのFedWatchを見ますと市場の0.25%利上げ織り込み度は93.5%状態ですから完全に織り込まれてしまっておりやらないわけにはいかないところに差し掛かっていますので実施はほぼ現実のものとなりそうです。

Data CME
Data CME

むしろ12月以降にさらに利上げを継続する意思があるのかあるいは一旦打ち止めにして様子をみるかといった先行き判断に対するパウエル議長のコメントで利下げ継続意向がでればドル安、打ち止め感が醸成されればドル高円安に動くことが考えられます。
また事実上同じ日となる31日の東京タイムの日銀政策決定会合については10月初旬には米欧の中銀の緩和的対応にあわせて日銀もなにか緩和的措置を発表することが期待されましたが、直近の報道では追加政策の実施を見送る可能性も高まっていることからなにもしなければドル円は下落することが予想されます。
したがってハロウィン買いもここまでの材料をすべて見極めたうえで売買しても遅くはなさそうで、あまり慌てて相場の方向を断定しない取引が有効になりそうです。