山手敏郎
7月第一週、ドル円はG20を無事通過したことから月曜のオセアニアタイムに大きく窓を開けて上昇しましたが、108円台中盤から上がかなり重たい状況で結局3日と持たずに窓を埋めて下げる動きとなりました。

7月5日の雇用統計の結果

5日の金曜日に発表された6月米雇用統計は、米非農業部門雇用者数変化が22.4万人増と市場予想の16万人増を大きく上回りましたが、その一方で、同失業率は予想の3.6%に対し3.7%となり、同平均時給は前月比+0.2%と予想の+0.3%を下回る結果となりました。

ドル円はいいところどりで大きく上昇し108円台中盤を超える上伸を果たし108.47円レベルで週の取引を終えています。
ドル円4時間足
ドル円4時間足

テクニカル的に見ますと週明けはもう少し上値を試しそうではありますが、108.800円から上のレベルはこれまで何度も止められてきた領域だけに果たして今の材料だけでさらに上値を追えるのかどうがに注目が集まりそうです。

最大の注目はパウエル議長の議会証言

週末の雇用統計の結果が良かったことからCME・FedWatchの利下げ確率は7月末に0.5%という見方がかなり影をひそめる状況にはなっていますが、依然として利上げ確率100%を維持しており、市場との対話をFRBが重視するのであれば最低0.25%の利上げはせざるを得ない状況に追い込まれていることがわかります。
Data CME
Data CME

そんな中で10日のNYタイムにはFRBパウエル議長の定期開催の議会証言が実施予定であることから7月利下げ期待の中でどのような発言がでるかに大きな注目が集まりつつあります。FRBは5日段階でべいぎかいにパウエル議長証言のもととなる記入政策報告書の提出内容を公表しており経済成長の持続へ適切な行動をとると明記し、景気の下振れ懸念が拭えなければ、早期に利下げに踏み切る考えを強調していることから、パウエル発言もこれをトレースしたもののなることが予想されていますが、0.25bpの利下げに留まるとなった場合にはドル円の買戻しが出る可能性もあり、このあたりのパウエル発言は非常に為替に影響を及ぼしそうな気配となってきています。また10日には6月のFOMC議事録も公開されることからどのような議論がなされたのか次第ではまた株と債券の動きに変化がでることも予想され、引き続き目が離せない状況が続きそうです。

完全の株価見合いの金融政策が見透かされたパウエル

FRBは確かに市場との対話が重要であることは言うまでもありませんが、昨年末までは利上げに対して非常に強気であったのに年末の株式相場の下落から一転して緩和姿勢に転じてしまったパウエル議長は完全にその政策が株価にプライオリティを置いていることが市場に見透かされた状態に陥っており、すでに7月FOMCでは完全に利下げを織り込まれていることから最低0.25%は下げざるを得ない状況になっている点が気になります。なんといってもS&P500もダウも史上最高値を更新しているのに利下げをせざるを得ないというのは経済学的にみればこんなに不思議なことはないわけでこうした市場の風潮を形成させてしまったという点ではFRBのやり方には相当な問題があることがわかります。

仮に利下げをしなければ株式相場は失望から大きく売られることになることが予想されますし、予想通りの利下げが実施されればさらなる利下げを市場が催促して株価が下げる可能性もあり、どちらに転んでもまったくいいことのない状況がやってきそうです。そもそも市場がFRBに依存しすぎている感は否めませんが、それに即座に応える姿勢を見せているのはかなり問題で政策的に大失敗にならないことを祈りたい状況になってきています。

月末まではFRBの金融政策で相場が上下にブレス可能性が高そうですから、相当慎重に売買していくことが望まれます。