FRB・隠れQE実施で米株もドル円も下落の可能性は減少か
山手敏郎
FRBは9月にレポ金利が急騰したことを受けてすでに過去3週間あまりで1760億ドル円程度の資産拡大を行短期金利のFFレート内への収容をはかる動きをみせていますが、月末のFOMCを前に11日に正式に来年の4月から6月までをめどとして短期国債を月額600億ドル、日本円にして6兆5000億円弱のペースでの購入を発表しました。

量的拡大QEそのもの

パウエル議長はしきりにQEの実施ではないと何度も主張していますが、若干金額規模は小さいですし短期債だけに限定した買入とはしているものの、内容はまさに量的拡大QEそのものということになり、これまで延々と続いてきた中央銀行バブルがどうやら当面延命する動きになりそうな状況です。これを受けて為替相場の方もドル円はここから大きくは下げない可能性のほうが高まってきており、年末にむけて10月末をめどに逆に下値のどこで買い向かうかが大きなテーマになってきそうな状況です。

本来月足で延々と続いてきた三角持ち合いを8月21日に一回下抜けたわけですから、年末に向けてさらに100円方向に動くことも期待されましたが、今回のFRBの政策決定でどうも相場はそのような動きにはならなさそうなところに近づいてきており、個人投資家としてもかなり発想を転換させる必要がでてきているようです。

トランプ政権になってからはよくみると10円幅の中で動いているドル円

ところで2017年の1月トランプ政権がスタートしてから相場は猛烈に上昇したりしてかなり大きな動きを示現しているような印象を多くのトレーダーが持っていますが、実はよくよく調べてみますと上昇したのは大統領に当選してから政権がスタートするまでの2016年後半から2017年の年初までで、その後のドル円は104円と114円の間を概ね行き来するだけの完全な10円幅のレンジ相場に入っていることがわかります。

ドル円月足推移
ドル円月足推移

上のドル円の月足チャートをご覧いただきますとわかりますが2015年につけた125.862円を高値とし下は民主党政権時につけた75.560円レベルから伸びるサポートラインとで囲まれるかなり大きな三角持ち合いを延々と抜けずに今年の8月21日に明確に下抜けしたことから100円方向にさらに走ることを多くのテクニカルアナリストが想定したものですが、結果的に足元の状況ではまたこの三角持ち合いの中にドル円は戻ってしまい今年はとうとう112.400円と104.400円レベルの8円幅で年間の値幅を確定させてしまいそうな状況になりつつあります。この値幅は過去10年でみてももっとも狭いものになりそうで、長期にポジションを保有して売買するのには決して向かない通貨ペアであることがあらためて確認できるものとなっています。

ただレンジ相場は個人投資家にとっては安全な取引場所

スイングトレードなどをする投資家にとってはどうも年末までのドル円も今年はそれほど妙味がなさそうな雰囲気になってきてしまっていますが、一定のレンジ内での取引であることがわかればこれほど安全なものはないわけですから、むしろ売買の枚数を増やすことでスキャルピングやバイナリーオプションで稼いでいくことに集中させる戦略も一つの考え方になりそうです。ここからは112円中盤と104円中盤をどちらも超えなさそうな状況ですから逆張りでも順張りでも取引はかなりしやすくなることが想定され、その中で思い切った売買をしていくことも重要な選択肢となってきそうです。今年はプロのファンド勢も儲かっておらず奇抜な戦略で売買をしかけてくる可能性がありそうではありますが、残り2か月半なんとかうまく利益を積み上げることで年末を乗り切ること考えていきたいところです。