20150615c6月10日に黒田日銀総裁のコメントをきっかけに、ドル円は約2円下落し、大損した個人・機関もあると思われますが、その時の黒田総裁のコメントは、

実質実効為替レートで見ると円安になっているのは事実」

実質実効為替レートでここからさらに円安はありそうにない」

というものでした。

今回は、この「実質実効為替レート」についてふれてみたいと思います。

実質為替レートとは?

通貨ごとにインフレ率の違い・物価の変動を考慮して算出された為替レートの事。

例えば、2014年1月1日の為替レートが1ドル=100円、そして1年後の2015年1月1日の為替レートが、1ドル50円の円高になっていたと仮定します。

日本国内限定で考えた場合、全く物価の上昇や下落がなければ、100円の価値は、翌年も全く変わりませんよね。

2014年1月1日に100円で買えたハンバーガーは、2015年1月1日にも100円で買えるということです。

次に、米国に目を向けてみましょう。

例えば2014年1月1日に1ドルで買ったハンバーガーが翌年の1月1日は1.1ドルに値上がりし、物価が10%上昇したとします。この場合、物価が上昇するということは、2015年の1ドルは、1ドルでハンバーガーが買えなくなってしまっているので、昨年の価値を持っていないことになります。

では、日本からアメリカに行った場合どうでしょう。

2014円は1ドル=100円ですから、日本とアメリカでは同じ価値で、ハンバーガーが1つ買えます。

2015年はどうでしょう。1ドル=50円ですから、1.1ドル=55円でハンバーガーが買えますね。

でも、もしアメリカでも全く物価が上昇していなければ、50円でハンバーガーが買えたのです。

よって、物価の変動によって、同じ1ドルでも購買力が変ってくるのです。

このように、物価の変動までを考慮した為替レートを実質為替レートと呼んでいます。

実効為替レートとは

2つの通貨ペアの為替レートだけでは捉えられない、相対的な通貨の実力を測るための総合的な指標です。

具体的には、対象となる全ての通貨と日本円との間の2通貨間為替レートを、貿易額等で計った相対的な重要度でウエイト付けして集計・算出しています。
現在、日本銀行は国際決済銀行(Bank for International Settlements、BIS)公表の、Broadベースの実効為替レートを利用しています。

日本銀行
https://www.boj.or.jp/statistics/outline/exp/exrate02.htm/
国際決済銀行
http://www.bis.org/statistics/eer/index.htm

これら実質為替レートと実効為替レート、2つの為替レートを組み合わせたものが実質実効為替レートと言います。

image001
左の紫の縦軸が普段見慣れているドル円の価格です。

右の縦軸が円の実質実効為替レートです。簡単に見方を説明すれば、100を基準に考えて↑上に行けば(数字が小さくなれば)円安を示します。

紫のラインチャートがドル円の値動きです。

黒のラインチャートが実質実効為替レートの推移になります。

現在2015年実質実効為替レートは70台を推移しています。
前回70台をつけた2007年は、実質実効為替レート80を割って70台に入り、その後急落、ドル円も円高に向かっています。
その前は1985年プラザ合意のあった頃までさかのぼらないといけませんが、70台でやはり下落。ドル円も円高に向かいましたが、この時の円高はアメリカに誘導されたので、ちょっと違うとは思いますが・・

実質実効為替レートという観点からは、70という水準はもういい頃だと思っている人は多いのだと思います。

仮に実質実効為替レートを国力と考えるのであれば、日本はかなり弱くなっているということですし、ドル円75円の頃と比べれば、私たちの資産価値はかなり目減りしています。
この点をおそらく黒田総裁は懸念を示しているのでしょうが、今回の円安に誘導したのは黒田総裁本人であることは事実です。また、株価が実際に上昇したのも事実です。
これからも黒田総裁が、消費者物価2%にこだわるようでしたら、原油価格の上昇を待つか、あるいはドル円140円超まで行かない達成は難しいのではないでしょうか?
個人的には、2%にこだわる必要はないと思っているのですが・・・

もちろん、過去のチャートが示すように、ここで反転し円高に再度向かうのであれば、ドル円120円を割れれば株価も大きく下落し、日銀やクジラと言われている本邦御上勢が買った外貨資産や株なども含み損が出て、年期金などが払えず、大変なことも考えられます。

上サイドも下サイドも、どちらも日本はリスクを抱えた状態なのです。