山手敏郎
110円台に下落したドル円~しかし月末に向けては意外な強さに注意

バイナリーオプション勉強コラムです。

8日、中国の経済指標が弱く東京タイムの終了近辺で一旦111円を割り込む動きを見せたドル円でしたが、ショートが溜まり過ぎた感もあり再度111円台に押し戻されて22時半の米国雇用統計で意表をつくNFP2万人という数字から大きく下押しする形となりました。

瞬間的には110.785円をつけたもののこのレベルではそれなりの買い需要もあり111円台に乗せて週の取引を終えています。
久々に1日で90銭程度動いたことからとても大きな動意になったような気がしますが、やはり2月とはちょっと違う動きが出始めていることが感じられる相場状況です。
ドル円15分足 米国雇用統計前後の動き
ドル円15分足 米国雇用統計前後の動き

正月からドル円が上昇している3つの理由


さて週明けのドル円は一段と戻り売りが強くなりそうですが、正月3日大きく突っ込んでからは一貫して上昇して3月に至っています。
これには3つの理由があるようです。

1)年明けから貿易黒字が急激に減少し1月は単月で赤字に転落


実はこの裏には需給の状況がかなり変わってきていることが大きく影響しているようで、ここから3月末までも下落しても底堅く戻してくる動きが出る可能性がありそうです。
財務省が2月20日に発表した今年1月の貿易統計速報によると貿易収支は1兆4152億円の赤字となり、実に4か月連続で貿易赤字が大幅に拡大している状況で、ドルから円転する輸出勢の為替需要が大幅に後退していることもドル円の上値を抑えない動きにつながっているものと考えられます。
この状況は3月以降も継続することが考えられることからドル円は上昇しても売りに押されることが少なくなりそうです。

2)機関投資家が接触的にドル円買いに向かっている。


また年金とみられる本邦の機関投資家が一貫してドル円を買っていることがドル円の下落を止めているといわれています。おそらく外債投資のためのドル原資調達が目的とみられますが、これまでは決して高値を追いかける動きはしてこなかったものの、うまく買えないことから110円台までリーブオーダーが上昇してきていると言われており、これが事実なら今週以降もドル円は下値でそれなりの底堅さを見せるかどうかが大きなチェックポイントとなりそうです。
邦銀勢も裸でドル円を買う動きがかなり強く、世界的に見ても本邦勢だけがドル円を買い向かっているといわれ、この動きがどこまで続くのかも気になるところです。

3)M&Aに伴うドル需要も引き続き旺盛


さらに年明けからもM&Aがらみでのドル調達が相当出ているようで、直近でもルネサステクノロジーの米企業買収で7000億以上のドル買い需要が示現していることからこうした期間限定の買い切り玉が3月一杯登場することも想定しておく必要がありそうです。とくに輸出が減少している中でこのようなM&Aによるドル買い需要はかなり目立つ存在になっており、全体としてドル円は産業構造の変化の影響をうけて恒常的にドル買い需要が強まる可能性も考えておく必要がありそうです。

NYダウは三尊天井の可能性


年明けから急激に値を戻してきたNYダウは昨年10月の高値を超えて上昇するかどうかが注目されましたが結局上昇10週目にして下落に転じており結局抜けきれずに三尊天井を形成するのではないかという見方が強まっています。

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形としては左右対称ではありませんが、このまま年末の下落となった2万2000ドル台前半を下抜けることになるとちょうど山の高さ分をさらに下落することになることから1万8000ドルレベルを目指すリスクも高まることになり、これまでNYダウの上昇に正相関でついてきたドル円は需給のバランスとは別に下落に転じることも意識する必要がありそうです。

全体としては実需とこうしたNYダウの相場反転の動きのどちらの力が強いか次第でドル円は短期的に上に向かうか下落するかが決まりそうですが、3月一杯はそれなりの強さを発揮しそうで112円台方向へ回復する動きになることも十分に考えて取引することが重要です。