山手敏郎
いよいよ史上初の10連休がスタートしてます。株式相場は6営業日連続で休場ですが、為替市場は本邦勢だけがお休みということで東京タイムに流動性が枯渇した段階でなにか仕掛け売買がでることが非常に危惧されるところです。
市場ではこうした薄商いの時間帯を狙って再度今年1月3日の朝突然起きたようなフラッシュクラッシュの再来を危ぶむ声も聴かれますが、こうした状況は果たして再度起きるのかについて考えてみたいと思います。

今回の休みのドル円は正月とはかなり状況が違う可能性

ドル円に関して言いますと正月大幅下落したときに下値にリーブオーダーを置いていた輸入勢やM&Aなどの実需筋が殆ど存在しなかったことから結局相場を追いかける形で買いが入り、暴落後のドル円は大きくねを戻す形となりました。
この反省から今回の長期連休では下方向にもかなり本邦勢からリーブオーダーが入ってきているようで正月のように底抜けるような動きにはならないのではないかといった見方も高まっています。一方上値のほうはすでに112円の中盤まで回復する動きとなっていますが、ここから上は輸出税が相当の売りを並べていることから上方向に飛び上がる可能性も低そうで、結論からいいますとドル円だけでフラッシュクラッシュは起こりにくいものの依然として下落の可能性は否定できなというのが正確な見方ではないかと思われます。

危ないのはむしろトルコリラ円か

ドル円に絡む下落の動きとして注意したいのはむしろトルコリラで正月の下落でもストップロスを一切置かずにスワップ狙いの取引をしていた本邦個人投資家がかなり下落で強制ロスカットをつけることとなり証拠金を超える追証の支払いを余儀なくされたケースが多かったようです。このことは海外の投機筋も相当承知しており、円高進行ということでいいますとドル円を売るよりもトルコリラ円の売りを仕掛けてくるリスクのほうがどうも高そうな状況になりつつあります。
そもそもトルコリラは年率で20%近いインフレに直面しており、4月に入ってもすでに対ドルで2%近いリラ安を示現していますから、これに輪をかけるような動きでさらに下落が進むことになれば当然円に対してもリラや大きく弱含むことが考えられます。さらに足元ではトルコ中銀の外貨準備率がかなり低下しているのではないかとの危惧の念が高まっており、こちらもトルコリラ売りの大きな要因になってしまっています。またエルドアン大統領の言動もEU圏、米国から相当反感を買っているのが実情でロシアから購入したミサイルとNATOのレーダー網を利用して発射するという話ひとつとっても西側諸国の感情を逆なでしているのは間違いなく、足元では米国がF35戦闘機の売却を一旦止めている状況にあります。もしエルドアン大統領が代わりにロシアからの戦闘機購入を決めた場合、関係は相当悪化することが見込まれることから、政治的なリスクでもトルコリラは売られやすい地合いにあることは意識した置く必要があります。当然こうした動きが示現するとドル円の下落にも大きな影響を与えることになります。多くの国内店頭FX業者は25日早朝6時の段階で11日分のスワップポイントをすでに顧客に付与していますから、実際のゴールデンウイーク期間中にポジションを保有してもなんらスワップの対象にはなりません。したがって本来はスワップ獲得直後に一旦リカクなり若干の損切をするなりしてもポジションをスクエアにしておくべき状況ではないかと思われます。

アルゴリズムがほかのアルゴに追随する動きには注意が必要

最近の投機的な売買の8割以上がAIを実装したアルゴリズムによるものであるとされていますので、どんなに短い時間足でもトレンドがでれば価格の高い水準でも買い向かい、逆に売りがかさめば簡単に反転して売りに追随するというのがアルゴ取引の大きな特徴になっています。そのためリスクオンとリスクオフは常に短時間で切り替わる状況で裁量取引の市場参加者だけで構成されていた相場に比べますと動きが把握しづらくなっているのは事実です。また一定の動きがでるとなんの躊躇もなくその動きについていくのがアルゴリズムの一つの特徴でもありますから、売りが進むとそれに追随するアルゴの売買で動きが想像以上に大きくなる、いわゆるオーバーシュート気味の相場が示現するリスクはやはり想定しておいたほうがよさそうです。

日本株売りのためにドル円をヘッジで売る動きにも注意

この連休でもう一つ考えておく必要があるのは日本株の現物売買が6営業日も連続して全くできなくなることで株が売られるような状況ですとその代わりにとりあえずドル円を売っておくという動きがでることにも注意が必要になりそうです。こうした動きはドル円とは直接関係ないにも関わらず株の下落に連動する可能性があるわけですからやはり注意が必要となります。

こうして見てきますと、フラッシュクラッシュのような事態が簡単に起きるとは言い切れないものの、ドル円相場が下落する可能性は否定できないというのが一つの結論になりそうで、トルコリラ円のようなクロス円の下落に巻き込まれることもありうるということはしっかり意識しておくべきでしょう。

この期間中につねに相場を見られる方ならポジションをもつのは問題ないと思いますが、外出が多いなかでポジションを放置しておくのはできるだけ避けたほうがいいのではないでしょうか。むしろ連休明けにはまた別の形で売買チャンスが巡ってくることになりそうですから、無理な取引だけは絶対避けたいところです。