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表①:ドル円 時間足(赤:陽線 青:陰線)

日銀、2か月連続の失敗! ~円はドルには勝てない~

先週は、予想通りドル円は下落しましたね。 ただ、ちょっとピッチは速すぎるかもしれません。白いラインの付近、118円50銭台付近で、1月29日、日銀金融政策の結果発表を皆が待っているところ、日経新聞がすっぱ抜いて119円台前半まで上昇、その後121円半ばまで上場しましたが、3営業日後には、もう既に118円50銭を下回り、下値を切り下げる展開となりました。とほほ。
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表③:日経平均 時間足(赤:陽線 緑:陰線)

日経平均も同様に、日銀の発表前の前場の水準よりも下の水準まで既に下落してしまいました。8日月曜日は、更に下げてスタートすると思われます。

結局、12月に引き続き、1月も日銀の政策は失敗に終わってしまいました。

2か月連続で、やらないほうが市場を混乱に陥れることはなかったでしょう。

では、どうしてこんなにドル円は下落してしまったのでしょう?

日銀マイナス金利導入、失敗の理由

1つ目の理由として、ドルが大きく下落した点があります。
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表④:ドルインデックス 日足(赤:陽線 緑:陰線)

ドルが下落したから

よくテレビのニュースでは、円が買われ、ドルが売られ・・と耳にしますが、今回のドル円の下落は、ドルが大きく下落したからと言っていいと思います。テクニカル的には、先週もお話ししたように、ドルインデックスが100に近づくと、ドルは下落する傾向にあり、今回もやはり下落しました。また、100の水準付近では、アメリカ側もドルインデックスのチャートを見ているのか、牽制発言が聞かれます。

今回も、やはり1日の日に、FRBのNo.2のフィッシャー副議長が、ニューヨークでの講演で「原油安とドル高が一段と進み、予想よりも物価を下押ししそうだ」と発言し、利上げの是非を慎重に見極める姿勢を示しました。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASGM02H0P_S6A200C1EAF000/

また、1日は、米国1月ISM製造業景況指数の結果がまた50を下回り、3日には米国1月ISM非製造業景況指数も予想を下回り、更に3日の日はFRBのNo.3のダドリー ニューヨーク連銀総裁が「市場の混乱で見通し変更の可能性も」と発言したことで、ドル売りに勢いがついてしまう結果となってしまいました。

これによって、3月の利上げはない、あるいは2016年の利上げは4回から1回に、もしかしたら、2016年の利上げはないかも?との憶測から、今まで利上げの期待で買われていたドルが売られる展開となりました。その一方で利上げを好感しない株式市場は上昇し、ダウは183ドル上昇、翌日も上昇しました。

日本は、逆にドル安円高を歓迎しませんから、日経平均はマイナス推移となりました。
このように、アメリカの要因で利上げ期待後退からドルが下落する展開となったのです。

日米金利差

2つ目の理由は、日米金利差です。

1月29日の日銀のマイナス金利導入を受けて、多くのアナリストが日米金利差拡大でドル円は上昇するだろう、と言っていたのを聞かれたと思います。

では、検証してみましょう。

先週は、日銀によるマイナス金利の導入で、銀行の定期預金の金利も下がることについてふれましたが、実際にメガバンクが動きましたね。http://mainichi.jp/articles/20160206/k00/00m/020/117000c
これと同じように政策金利の動きに国債の金利も反応します。基本的には、政策金利を上げれば、国債の金利も上昇、政策金利を下げれば国債の金利も下落ですが、国債は毎日市場で売買されていますから、市場参加者の思惑も加わります。

このように、政策金利の上下に、民間銀行の金利、国債の金利が間接的に動きます。豪ドル円の外貨預金が日本人に人気なのは、日本よりもオーストラリアの方が、政策金利が高く、銀行の預金金利も日本より高いからですね。もちろん、為替差損益は考慮して運用しなければいけませんが・・

では、今回のマイナス金利導入により、国債の金利はどう反応したのでしょうか?

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表⑤:日本国債10年債利回り 日足(赤:陽線 緑:陰線)

セオリー通り、日本国債は買われ、金利は低下。 その後も価格上昇により、金利は更に低下しました。この利回り低下には、マイナス金利導入により、民間銀行が日銀の当座預金に預けられなくなったことで、国債を買うだろうと、先読みして市場参加者が国債を購入した結果、価格上昇・金利低下となった思惑も含まれると思います。

ただ、お金は金利の安い方から高い方へと流れることが当然のことですから、日米金利差の観点から米国債にも目が向くことが当然のことです。

それでは、米国債のチャートも見てみましょう。
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表⑥:米国債 10年債利回り 日足(赤:陽線 緑:陰線)

すると、見てお分かりの通り、米国債利回りも毎日のように低下しているのです。更に驚くべきことがあります。

  • 1月28日 米国債利回り1.982% 日本国債利回り0.226%(日米金利差1.756%)
  • 1月29日 米国債利回り1.923% 日本国債利回り0.114%(日米金利差1.809%)
  • 2月04日 米国債利回り1.846% 日本国債利回り0.065%(日米金利差1.781%)

マイナス金利導入前日28日の10年債の日米金利差が1.756%ありました。

翌日、マイナス金利の導入を受けて、1.809%に金利差拡大となっています。ところが、雇用統計前日4日には1.781%に金利差が縮小してしまっているのです。米国債も日本国債同様に、日本の民間銀行が購入してくることを見越した購入が入り、価格上昇・金利低下の思惑が入ったと思われます。プラス、この米国債下落トレンドは米国の利上げ期待後退が含まれます。
このように、金利差拡大どころか金利差縮小、価格上昇による利回り低下で、米国債と連動しやすい米ドルは上昇の頭を抑えられたわけです。

これでは、ドルが上昇できなかったことが分かりますね。結局、残念ながら、自国通貨の円はドルには勝つことができないということです。やはり日銀による緩和は米国とのセットで行わないと効果がでないのかもしれません。

以上のように、先週はドル主導の相場でした。前回のコラムで、先週はドル主導の相場展開が予想されたため、クロス円ではなく、ドルストレートの通貨ペアでトレードしたほうがいい、とお話ししましたが、もし、売り(LOW)でも買い(HIGH)でも、何度も往復ビンタをもらってしまった方は、チャート以外に何に目を配っていたかを検証してみて下さい。

チャート以外のベンチマークを見つけよう!

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表⑦:終値比較(赤:上昇 青:下落(低下))

上の表は、終値ベースで前日比(前営業日比)、上昇なら赤、下落(低下)なら青でセルに色をつけてあります。これは日足ベースの終値ではありますが、私は、トレード前に上の表に示したものを全てチェックして、関連性・連動性・相関性のあるものが何なのかを探しています。29日~5日にかけては、ドル円、ユーロドル、ドルインデックスの連動性・相関性が強いことがわかります。このことからも先週はドル主導の相場だったことが分かりますね。

先週はユーロドルのトレードを主に行っていましたが、トレードをする通貨ペアのチャートを見ることはもちろんですが、何かもう1つか2つ、ベンチマークになるものをトレード前に見つけておくと、勝率をアップさせることができます。私の場合、先週はドル円とドルインデックスをベンチマークにユーロドルのトレードをしていました。

このように、トレードに入る前に是非、その日の、その時間帯のベンチマークを見つけて頂きたいと思います。相関性は年間を通して同じという訳ではなく、指標発表や様々な要因によって崩れることがあります。例えば、3日、4日、5日とNYダウとドルインデックスの関係が崩れています。3日、4日とドルは利上げ期待後退から売られるものの、ダウは利上げ期待後退を歓迎して上昇。逆に5日は雇用統計の結果を受けて、再び利上げの可能性にドルは上昇し、ダウは下落しています。NYダウと日経平均も同じです。連動性の強い2つのインデックスですが、ドル下落を好感するダウに対し、4日、5日とドル下落を嫌気する日経平均。関連性の強いものどうしでも関係が崩れることがあるので、それを理解してからトレードをしないと痛い目にあうことがありますので、注意してください。

今週のドルはどうなる?

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表⑧:ドル円 日足チャート(赤:陽線 青:陰線)

ドル円日足チャートや表④のドルインデックスを見る限り、ちょっと突っ込み売りには注意をしたほうがいいかもしれません。日銀その他の御上のサポートバリアは全く期待できないものの、何となく1月20日につけた115円97銭は堅い気がします。一旦ドル買戻しとなる可能性もあるので、5日の高値、4日の高値はしっかりとおさえておきましょう。

ただ、今週は10日、11日とイエレンFRB議長の議会証言を控えていますので、先週FRBのNo2,No3がハト派発言を行ったことで、ドルが売られる展開となりましたので、トップのイエレン議長もハト派発言になった場合は、先週同様にドル下落の展開となるかもしれませんので、注意が必要です。

先週は、ドル円を見ていて、結構値が飛ぶことが多かったため、ドル円を取引される方は気をつけてトレードしてください。今週はSQ週でもあるので、株の動きにも注意をしましょう!また、今週は旧正月のため、中国をはじめ、アジア市場は休場のところが多いので、東京時間取引される方は、急な変動に注意しましょう。