感謝祭を過ぎて本来ならば年末にむけて需給の面からも上昇しやすいドル円ですが、今年は果たしてそうした例年通りの季節循環が働くのかどうかが大きく注目されるところとなってきました。足元では米国における本国投資法の施行により多くの米系企業の資金が米国に戻ってきていますし、投資ファンドの新興国からの資金の引き上げもこの時期米国に回帰しようとしており、全般的にドル需要はかなり旺盛な状況です。また国内では本邦勢によるM&A等の直接投資の意欲が依然旺盛で年内にもまだドル調達意欲が残っているとのことからドル円にも買い需要がまだまだ出てきておかしくはないのですが、実効レートでみますとドルはかなり天井にさしかかっており、早晩下落するリスクも併せ持っているだけに慎重な取引が求められそうです。

BISが算定する名目実効レートではドルは33年ぶりの高値

ドルは対円では113円台とそれほど高いレベルには至っていませんが、BIS・国際決済銀行が算出し公表している為替の名目実効レートではすでに33年ぶりの高値を付けており、ここからはそう簡単には上昇しない可能性もでてきています。この名目実効為替レートとは通貨ペアに二国間の物価指数の比で調整したものから算出するもので相変わらずインフレにはならない国内の物価等を換算するとドル円がこれ以上上昇するとかなり実質的なドル高が進むことになるためトランプ大統領のけん制発言も一層出やすい状況になることは間違いなさそうで年末多少の上昇があったとしてもここからは逆に売り場探しになることも覚悟しておく必要がありそうです。

米株も年末ラリーは期待できないか

ドル円15分足 23日の動き
ドル円15分足 23日の動き

感謝祭期間中は米株も殆ど開店休業状態ではありましたが、23日のブラックフライデーは半日だけ株式市場が開いていたものの原油価格が大幅に下落したことを嫌気してNYダウもNASDAQもS&P500も同時に下落に転じており、例年にみられるような感謝祭後から年末までのラリー相場の雰囲気がほとんど感じられない状況です。米債市場の10年債金利も上昇から下落に転じており、FRBの利上げ期待もすでにピークアウトした始めているところがなんとも気になる状況です。ドル円はほとんど市場参加者がいない23日のNYタイムの始まり時間帯に112.662円まで下押しをすることとなり、想像以上に上値の重たい展開となりました。
通常の年末相場ならばここから日米の株とドル円はクリスマスの手前までは上昇基調を維持するのが常となっているのですが、果たして今年はそうしたアノマリーがワークするのかかなり微妙です。どうも相場のセンチメントが徐々に変化しているようで、方向を断定した取引だけはしないほうがいいようです。

英国のBREXIT関連での動きにも注意

英国のBREXITに関しては25日にEUが正式に離脱案を決定したことからここからはもっぱら英国内でこれが議会承認されるかどうかなどの問題にシフトすることになります。週明けは離脱案が正式決定したことを好感してポンドもユーロも買いもどされるのかも知れませんが、その後の英国内での政治状況によってはまたひどく売り込まれるリスクは残っており、クロス円が下落すればドル円も巻き込まれて円高にシフトする危険性は十分にあります。英国内の政局がどのようなタイミングで進行していくのかはまだ実際に起きてみないとわからないだけに仮に感謝祭以後ドル円が上昇に転じてもどこからでいきなり振り落とされるリスクを考える必要がありそうです。今のところまだわかりませんが、メイ首相が保守党党首から引きずり降ろされたり、自主的に首相辞任となった場合には瞬間的にかなりポンドが売られることになるためこれに巻き込まれるとやっかいな状況になりそうで、今週はとくに予断を許さない時間帯になりそうです。年末ぐらいすんなり上昇して多少のモチ代が得られる相場になればありがたいのですが、そうすんなりいかないのが為替相場の難しいところと言えます。