山手敏郎
4日からの週のドル円は何度か109円超えを試す展開となりましたが、7日に中国政府が正式に米中の協議内容合意といったコメントを出したことからアルゴリズムがすかさずとらえて米株もドル円も大きな上昇を示現することとなりました。

200日移動平均線を上抜けで110円を目指すか

その後、12日のNYタイムにトランプ大統領がまだ合意していないと否定的発言をしたことから株が売られドル円も109円ぎりぎりのところまで押し戻される展開になったものの、終値ベースではほぼ年間の市場参加者コストともいえる200日移動平均線のレベルを明確に上抜けて週の取引を終えたことから、いよいよ110円を目指す展開になりそうです。
ドル円日足 (白線は200日移動平均線)
ドル円日足 (白線は200日移動平均線)

110円までの道のりは近くて遠そう

しかしながらここから110円までの道のりは目と鼻の先に見えるものの、109.500円にはオプションも設定されており、その一部はノータッチオプションと呼ばれる価格がついたら行使できなくなるオプションであることから徹底して防戦売りがでることが予想されます。

実際に8日もこの109.500円を一瞬ロンドンタイムの終盤につけそうになりましたが相当な防戦売りがでて一回では乗り越えることができませんでした。したがって何回かのトライが必要になるものと思われますが、防戦の売りは価格が下落しますと必ず買戻しをすることから逆に価格が下がらなくなることが殆どでどこかで乗り越えるタイミングたやってくるものと思われますから、それに乗ることが重要になります。

ただし、110円にかけては実需の輸出勢の売りも相当並んでいるようですし、ドル円を買い支えていると言われるPKO部隊のGPIFも生保などの機関投資家も110円に近づくところで買ったドル円を売っているようですから、こちらも上昇の歯止めになりかねず110円が近づくごとに利益確定も増えることから簡単には上値を伸ばすことができなそうな状況です。今年の米国の感謝祭は28日の木曜日でほとんどこの週は中盤から株も為替も取引が減るタイミングになりますので110円を超えることを目指すなら週明けの11日から20日ぐらいまでの間の実現できないとさらに上にはいかない可能性が高まりそうです。巷では112円だ120円だといった妙な楽観論も飛び交っていますがここからのドル円相場の上値は決して青天井ではないことは理解しておきたいところです。

CNNの、恐怖と欲望の指数(Fear&Greed)について解説

米国FRBが短期債の購入を月額600億ドルも実施している、いわゆる隠れQEのおかげが手伝って金融市場にはまたしても資金が大量に流入しており株価の上昇もこうした資金が支え始めていると見られています。

株式市場のセンチメントを示すものとしてはVIX指数が有名な存在ですが、それとは別にCNNが恐怖と欲望の指数(Fear & Greed Index)を毎日開示しており、市場ではこれを見ながらセンチメントを判断する向きも多くなっています。
これは・・・

  • 株価モメンタム S&P500対125日間の移動平均から現在の株価がどれくらい乖離しているか
  • 株価の強さ NY証券取引所で52週間の最高値と最低値を記録した株式の数
  • 株価の幅 株価が上昇している株と下落している株の数量の差
  • プット・アンド・コール・オプション プッシュ/コール・レシオ。強気なコール・オプションの取引量と弱気プット・オプションの取引量の差
  • ジャンク債需要 投資適格債とジャンク債の利回りの差
  • 市場のボラティリティ:ボラティリティを測定するVIX
  • セーフヘブン需要 株式と国債のリターンの差

という以上7つのファクターをベースにして0から100の数値で表されるバロメーターとなっています。50以下は恐怖率が高まり25以下は超恐怖状態ということになります。ぎゃくに50を超え始めると楽観状態に陥り75を超え始めると市場全体が超楽観という状況を示現することになります。

足元のこの数値は上のように91を示しており、相場は驚くほどの楽観状態に陥っていることがわかります。
こうなるとあらゆる資本市場で年末に向けてまだまだ相場は上昇すると期待しそれを目論むかたちで相場に参加しようとする向きが断然多くなることを示唆していますが、こうした楽観相場というのは長くは続かないことが多く逆に市場がいきなり反転して逆さまに動き出すといったリスクも高くなるだけにかなり注意が必要になりそうです。

相場が上昇しそうな以上それについて行かざるを得ないのは仕方ないですが、皆が強気になっているためにあとから順張りでついて行くと相場が反転して逃げ場のないところに陥る危険性もあることは十分に注意すべきでしょう。

現状でいえばなんとか感謝祭の前位までは相場も持つのでしょうが、これがクリスマスまで継続するのかどうかは疑ってかかるべきでとにかくそこそこの利益を確保できたら欲張らずにその後の様子をじっくり見ていく余裕が必要になりそうです。
バブル相場の最後は確かにもっとも走るものですが、調子に乗ってついて行くとだいたいそれまでの儲けをすべて失うことになりかねません。最後まで相場に付き合わない固い意志が必要な時間帯がやってきているようです。