予想通りのボラティリティ。2019年8月ドル円相場振り返り~9月相場を予想
山手敏郎
7月段階から想定していたように8月のドル円相場は案の定円高方向に下落することとなり、その値動きの上下振幅(ボラティリティ)も今年に入ってから最大のものとなりました。

8月のドル円相場を振り返り

ドル円4時間足8月推移
ドル円4時間足8月推移
上のドル円4時間足をご覧いただくとよくわかりますが、7月末・日本時間では8月1日の早朝のFOMCの結果を受けて一旦上昇するかのようにみせたドル円はその後トランプの関税実施発言を受けて激しく売り込まれることとなり、あえて高い飛び込み台が設定されることとなりました。その後またしても米中追加関税報復合戦の報道とツイートを経て26日のアジアオセアニアタイムで大きくギャップダウンを起こし瞬間的に104.421円をつけることとなります。

値幅の差は4.8円ほどで例年になく結構大きなものとなったのはご承知の通りとなりました。ただ意外に走ることはなくあっさり全値に近い戻しとなって9月相場に至っているわけです。

8月1日以降今月の相場でドル円が1日に1円以上動いたのは実に9回で、1日、2日、6日、7日、13日、14日、15日、23日、26日ということになりました。

変動幅が大きかったのは1日で業者によっては若干数字が異なると思いますが、ほぼ2円、翌日2日は1円、6日が1.5円強、7日が1円とお盆前からかなり大きな動きを示現することとなりました。また本邦勢がいないお盆休みの時期も大きな動きが出ることとなり13日が1.9円弱、14日が1.06円程度、15日が1.1円弱ということでこちらも予想通りかなりのボラティリティが出ています。

そしてジャクソンホールの時間帯での米中の関税をめぐる応酬劇のおかげで23日、明けた26日も激しい動きを示現しアジアオセアニアタイムで厳しい下落を示現させたあと大きく戻るという微妙な展開となったわけです。

したがってとにかく戻りは引き付けて売り、下がらなくなったらショートカバー狙いで買いを入れておけばこの8月相場はかなりの利益を確保できたのではないかおと思われます。

9月相場は依然として難しさを伴うものに

さて、過去はいくら振り返っても戻ることはできませんので、ここから考えなく手はならないのが9月相場の行方です。例年ドル円は米国のレーバーデイが終わった辺りで一旦下落してもその後は上昇に転じて年末は比較的高値に展開するというのが一つのパターンになっていますが、もっと長い目で見た場合にはドル高は年の前半で後半がドル安になりやすいというのが本来のアノマリーでここ10年以上の年末に向けての上昇というのは必ずしもいつも起きるものではないのが実情です。

今年の場合12日にECB理事会で利下げか緩和などの何等かの措置が出るのはほぼ決まった状況で、18日(19日未明)には米国のFOMC、そして明けて増税を前にした日銀政策決定会合と重要な中銀政策決定の発表が目白押しであることからその前の段階である程度市場が思惑から織り込む相場を示現させるのか持ち合いの状況を継続させるのかが非常に注目されることとなります。

9月1日で米中双方の追加関税が実施

8月最終週米中で協議が開かれるのかどうかの報道とトランプのツイートで相場は上下に大きく振らされることとなりましたが、結局のところ両国とも振り上げた報復のこぶしをそのままおろして予定通りの追加関税が実施されることとなりました。平均しますと両国ともに20%以上の関税率で実に1930年代以来の高率関税となるわけですから景気への影響がないわけはなく、ここから米株にもかなりネガティブな影響が示現してくることが危惧されます。
また対ドルの人民元レートはさらに元安に進むことになりやすく、対ドルで7.3を大きく超え始めるとアジア周辺国で為替を起因とした金融危機が起きるリスクも相当に高まることになります。相場がこうした状況を織り込み始めるとドル円でも決してドル高が進むとは思えず、今週の相場動向はとくに注視していくことが必要になりそうです。