ドル円は109円を割れず、今週は国内GDP発表に注目~消費税増税できるか~
山手敏郎
おはようございます。 毎週月曜日の朝更新している山手敏郎の為替コラム。 

先週の為替相場の動きを振り返ってみましょう。

国内はGDP速報値、欧州は議会選挙の結果に要注意

2019年5月13日の週ドル円は下方向を試す動きを見せましたが、結論からいいますと109円を割り込むことができず、下落は強まったもののレンジを抜けだすほどの動きにはならずに週の動きを終えました。

下値ではかなり本邦の資本筋、実需筋の買い意欲が強くそれなりのオーダーが並んでいたことから一気に突き崩すことはできなかったようですが、とは言っても上値も青天井で再上昇を目指せるような地合いではなく、
ここからどこまで戻れるのかが大きな注目ポイントになりそうです。
ドル円4時間足
ドル円4時間足

まずは日本の1~3月GDP速報値の結果に注目

月曜日8時50分には1~3月の国内GDP速報値が発表となります。大方の予想ではマイナスに転落することはほぼ間違いなさそうですが、年率換算でマイナス2パーセントを超えた場合かなり深刻で、4~6月も対中の貿易関連が悪化するのはほぼ間違いないことから、日本が先進国でも先陣を切る形でテクニカルリセッションに陥るリスクが高まることになります。

なにより10月に予定されている消費税増税をスケジュール通りに実施できるかに市場でもおおきな注目が集まりそうです。麻生財務大臣も茂木経済再生大臣もオンスケジュールで増税を口にしていますが、本当に実施できるのかはかなり大きな問題で、仮に3度目の延期ないし中止ということになった場合にはドル円は円が売られてドルが上昇する可能性もでてきます。

消費税増税見送りは国民生活にとっても株式市場にとっても一息つくプラスの動きとなりそうですが、金融市場全体でみますと1100兆円をこえる負債を抱える日本が増税をさらに延期するというのは決してプラスに働く話ではなく下手をすれば国債の格付け下落につながるリスクも高まることになります。

実際2014年の見送りのケースでは12月1日にムーディーズが何の予告もなくいきなり日本の格付けを1ノッチ下げたことからまずはアルゴリズムが起動し、ドル円は一気に上昇することとなりましたが、教科書どおりの動きはここまででその後日経平均の先物が下落し始めると一転して売りが加速し、119.15円まで買い上がったドル円は118.700円まで急落を示現することになりました。

このように国債格下げならドル円円売りと判でついたような対応を考えると実はほかの要素も絡めて逆にドル円が円高に走ることもあるわけで、こうしたイベントを通貨するのはきわめて難しい判断となりそうな状況です。足元の日本の格付けはすでに中国や韓国よりも低いもののなんとかA格を維持しています。しかしここからさらに格下げを食らった場合BBB格レベルも当然視野に入ってくることになります。

BBB格レベルといいますと他の先進主要国を見回すとイタリアと同列ということになり、日本の危機的財政状況が本格的な問題として顕在化してきた場合には簡単に
長期金利上昇幅が3%を超え、企業の資金調達コストに至っては6%超などという驚くべき状況に陥ることもありうるのです。

こうなると日銀が完全に制御できているという長短金利もどうなるか危なくなりJGBは一気に国際的担保価値を失うことにもなりかねず、なにより金融機関の資金調達にも相当な影響を及ぼすことが考えらるため、消費税増税見送りから国債格付けが下落する事態は想像以上に深刻なものになりかねないことをしっかり認識しておくべきでしょう。

5年に一度の欧州議会選挙の結果にも注目

5月23日からEU加盟国では欧州議会選挙が開催されます。

これまでこの欧州議会選挙というのはそれほど注目されてきたわけではありませんでしたが、EU加盟各国の状況がだんだんと右傾化しEU全体の協調性を高めることよりも自国の利益を求めるような動きが非常に顕在化しているだけに選挙でそうした動きが強まることはEUの弱体化にもつながるためここへ来て非常に注目されるようになっています。
ユーロドル4時間足
ユーロドル4時間足

当然選挙結果はユーロにダイレクトに影響を与えることになりますから、ユーロ安が進めばユーロ円も下落し、ドル円がそれに引きずられる形で下落することも想定する必要がでてくることになります。

また10月までBREXITを延期した英国も今回は仕方なく欧州選挙に参加する形になっていますがBREXIT党なる新たな政党が支持を集めており、既存政党2党ともに支持率を下げる形になりますとあらためてハードBREXITのリスクが高まる可能性もあり、先週から明確な下落トレンドのでているポンドはドル、ユーロ、円に対して明確に下げを加速するリスクも高まります。

ポンド円4時間足推移
ポンド円4時間足推移

こうなるとドル円も単体で上昇するかどうかを考えるのではなくほかの通貨との相対的な関係で円高が示現することも意識しなくてはならない一週間になりそうで、主要通貨の動きをよく見ながら取引することが重要になりそうです。