山手敏郎

とうとう方向感が見いだせないまま10月相場に突入

実質的な9月最終週も為替相場は今一つ方向感がなく、素人からプロまで市場参加者は総じて相場の先行きに対してどうなっていくのか懐疑的な状況の陥ってしまっているようです。

Data Tradingview
Data Tradingview

ドルの強さを示すドルインデックスは9月の過去1か月ほどを見ていただくとわかる通りほぼレンジの状態を形成しており、大きく上抜けるわけでもなければ下値も堅い動きを続けたことがわかります。

ドルインデックスの場合ほぼ半分以上がユーロドルを材料としていてドル円は15%程度と言われていますからあまり直接的な関係はありませんが、ドルの強さというものが相対的に維持されていてこうした相場展開になっているわけですから個別の通貨ペアではドル円もユーロドルも今一つ方向感がない状況を継続させているのはわからない話ではありません。

ドル円は106円~108.500円のレンジで推移の9月相場

ドル円4時間足9月推移

ドル円4時間足9月推移

過去1か月のドル円の推移を見てみますと106円台初頭から9月のFOMCに向けて上昇したものの108.500円には本邦の輸出勢、とりわけこのタイミングではトヨタであると言われていますが自動車メーカーをはじめとする輸出の売りがかなり強固に出た模様で、買いあがったファンドはこれを突き破れないまま崩れた一旦は107円割れを示現しましたが下値も堅く、国内ではGPIFをはじめとするPKO部隊がそれなりの買いを入れて相場を崩さない動きが顕在化し先週末でには108円手前のところで週の取引を終え、いよいよ10月相場に入って行こうとしているところです。
結果から見ますとたいした相場ではなかったということになりますが、9月上か下かに明確な方向感を打ち出すのではないかと相場について行った向きはロングでもショートでも切らされることとなってしまい、あまり取引妙味のある月ではなかったことがよくわかります。8月105円を割れてかなり長期の三角持ち合いの下抜けしたわけですから下方向を再度目指すと考えた向きもあったでしょうし、例年9月以降上昇相場になりやすいことから上をみた向きもあったと思いますが、結果は単なるレンジ相場だったことが今さらながらにわかる状況です。

ユーロドルも緩和があった割にはユーロが下がらなかった

ユーロドル4時間足9月推移
またユーロドルを見ておきますと9月12日のECB理事会でめいっぱいの緩和措置が打ち出されたことで一旦は大きく下げたものの、その後は結構な買戻しが入り、またドイツの景況感が悪化したことや英国のBREXITの先行きが不透明といったこともあってユーロドルは売り込まれ2017年以来の安値をつける動きを示現しています。

ユーロドルがドル高に向かっていることはドル円についても下値の支援要素になっていることはどうやら間違いないようで、ドル高円高が示現するとドル円は結果よくわからない動きをすることになるという典型的な時間帯を9月に過ごしてしまったようです。

足元では投機筋も様子を見ている模様

このわかりにくい相場は素人個人投資家のみならず、プロの投機筋も方向感がわからないようで次に何で相場が走り出すのかを見守っている状況が強くなっているようです。とはいえ9月まで多くのヘッジファンドはあまり大きな利益を獲得できないままになっていますからここから何か仕掛けの売買が出る可能性も強そうですが、どう動きがでるのかに多くの市場参加者の関心が集まりつつあるようです。

日経平均は9月世界的な株式市場の中で唯一明確な上昇トレンドがでましたが、これは9月末決算のファンド勢が顧客の解約を受けてヘッジで売っていた日経平均を買い戻しただけで10月以降新たに売りを仕掛けるのではないかというかなり悲観的な話も飛び出しつつあり、国内の株式市場関係者が楽観視するようにここから年末にむけて株価が上昇するかどうかはかなり微妙な状況です。

また米株もたしかに高値に張り付いてほとんど落ちては来ませんがほとんどは企業の自社株買いが支えており相場全体では決して大きな出来高にはなっていないという見方もあり何かがきっかけになれば簡単に下落に転じるリスクを持っていることも認識しておく必要がありそうです。

不穏な材料が揃い始めているのにも注意

9月相場ではまず社債を発行できないレベルのジャンク級格付けしか保有していない米国企業のレバレッジドローンの発行が大幅に減り始めており、なによりそれに投資するファンド勢がかなりの勢いで資金を引き揚げ始めていることが気になるところです。今のところレバレッジドローンを細分化してあらたに組成したCLOと呼ばれる債券市場に決定的なダメージは出ていませんが、資金の引き上げが進むとCLOの格付けにも変化が現れ、もともと流動性のない市場に一気に売りが加速すると暴落のきっかけを作りかねないだけにこの市場についてはつねに注視しておかなくてはならなくなっています。

また9月17日ドルの短期市場でいきなりレポ金利が上昇しはじめ一時的にせよ10%をつけるオーバーナイトの金利が示現したことも、原因がよくわからないものながら非常に気になるものとなってきています。2008年3月ベアスターンズが破綻した直後にも同様に短期のレポ金利が上昇しており、単純に法人税支払いや新規発行国際の資金需要だけでレポ金利が当たったかどうかわからないというのはなんとも悩ましいところです。NY連銀は10月10日まで継続して資金供給を行うことを決定していますが、確かにドル需要が旺盛であるといえばそれまでながら、なにか市場に変化が起きている可能性はありそうで、レバレッジドローン市場の変調もリーマンショック以来といなってきておかしなことはみな10年~11年ぶりである点がひっかかります。

10月は一定の相場の下落がある可能性も十分視野に入れながらロングをとるなら必ずストップロスを入れるなどまさかのときの対策を考えることが重要ですし、相場が変調を来していないかつねに注意深く見守っていくことが大切になりそうです。秋相場だから上昇といった先入観は失敗につながる可能性が高まりそうです。今年も残り3か月あまりですからより一層用心深いトレードを心掛けたいものです。