ユーロドルはどうして下落しない?
2016年2月22日コラム

買い材料のないユーロはなぜ下落しない?

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表①:ユーロドル日足チャート (赤:陽線 青:陰線)

先週のユーロドルは下落しました。16日月曜日にECBドラギ総裁が議会証言で「世界経済に関する懸念が増している」「市場の混乱で物価安定が弱まればECBは行動に移る」「インフレの進展は物足りない」などと発言したことで、追加緩和への思惑から売り圧力が強まりました。

また、先々週までのリスク回避ムードが一旦収束し、懸念材料の春節明けの上海市場も落ち着いた動きを見せ、上海総合指数は週足陽線で終わり、ドイツDAXやNYダウも週足陽線で終わったことなども、ユーロ売り材料になったと思われます。

日本よりも先に2014年6月にマイナス金利を導入したユーロ圏ですが、果たして効果はどうなのでしょうか?

先週16日火曜日から日本は実際にマイナス金利スタートとなったわけですが、以前にもお話ししたように、銀行株は、収益悪化を見越して、軒並み下落傾向にあります。

銀行株が下落することは、日本でマイナス金利政策をとる前から明らかでした。
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表②:ドイツ銀行株価

上のチャートは、ドイツ最大の銀行であるドイツ銀行の株価チャートですが、2015年春以降下落が止まらないことがわかります。株価が半値以下になっていますね。株価が示す通り、2015年のドイツ銀行の決算は、過去最大の68億ユーロの赤字を計上しました。この赤字決算を引き金に、ドイツ銀行の債券がデフォルトになるかも?という噂が広まり、先週・先々週とドイツ銀行が危ないという話題が市場に上がっているのです。
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表③:ドイツ 株価DAX

ドイツの株価指数DAXを見ても下落傾向が続いていることがわかりますね。
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表④:イタリア株価

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表⑤:フランス株価

イタリアの株価指数、フランスの株価指数を見ても同様に下落傾向にあります。

メジャーなEU国の株価を見てお分かりの通り、ECBが追加緩和やマイナス金利を導入しても、効果がでていないことがわかります。

このように、ユーロは買い材料がないにも関わらず、どうして上昇しているのでしょう。

ユーロが下がらない理由は3つ

現在、ユーロがなかなか下落しない理由として、3つのことが考えられます。

相対通貨であるドルが下落しているから

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表⑥:ドルインデックス日足チャート (赤:陽線 緑:陰線)

1つ目の理由はドルが下落しているから。

ドルインデックスを見て分かる通り、先週はやや戻しましたが、ドルの弱い時合が続いています。理由は、米国の継続的な利上げ期待が剥げたことによるものです。

2016年は3回~4回の利上げがあるだろうという期待で今までドルが買われていましたが、現在は、2016年の利上げが0~2回だろうと考えられており、その分、ドルが売られてしまったのです。このドルの弱さによって、ユーロが上昇し、下落することのできない要因になっているものと思われます。

英国のEU離脱懸念の問題

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表⑦:ユーロポンド週足チャート (赤:陽線 緑:陰線)

次に、隣国でありEU加盟国のイギリスEU離脱懸念の問題です。

上はユーロポンドの週足チャートですが、11月末以降、上昇が続いています。19日金曜日のNY時間、「EU首脳会議で英国離脱回避へ向けた協議がまとまった」と報道され、ポンドは買戻しの展開となりましたが、これはあくまで一時的なことと考えられ、EU離脱か、残留かの国民投票日が行われる6月23日まで、ポンドはどっちつかずの展開が予想されます。

それくらい離脱指示派と離脱反対派が現段階では拮抗しているようです。 離脱であれば更に大きくポンド売り、離脱回避であれば今までのポンド売りの巻き戻しでポンド買戻しが予想されます。

また、ポンドは米国の次に利上げをするであろうと言われ上昇していましたが、米国同様に利上げ時期が後退し、2016年は利上げがないだろうという期待外れの現状も、今まで買われていたポンドの売り材料になっていると思われます。

BOEはカーニー総裁も言っていることがコロコロと変わりよくわからないですが、先週はマカファーティ中銀金融政策委員がウォールストリートジャーナルのインタビューに「マイナス金利は手段の一つ」「すぐに利上げをする必要はない」と発言。またその一方では、カンリフBOE副総裁が「利上げ時期の後ずれを示唆するような経済ニュースはない」との発言もあり、英国中銀は本当に市場を振り回すため、要人発言には注意しなくてはいけません。

リスク回避ムードによるユーロ買い

そして、3つ目が、ユーロキャリートレードによる、リスク回避ムードがユーロを押し上げている材料だと思われます。現在は、円同様にユーロもリスク回避時に買われる通貨になっており、最近の重い市場の動向に、ユーロが買戻されたと思われます。

実はレンジ推移のユーロドル

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表⑧:ユーロドル週足チャート (赤:陽線 緑:陰線)

表①の12月から直近のユーロドル日足チャートを見ると上昇しているように見えますが、昨年1年間のユーロドルの週足チャートを見ると、実際は1.0500~1.1500の間で推移を続け、完全なレンジ推移が続いており、実は大きくユーロドルが上昇しているわけではない、ことがわかります。
両サイド、結構堅いサポート・レンジであると思われるため、両サイド近辺では一旦は逆張りでエントリーしてみても良いのではないでしょうか?

ユーロ円に注目!

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表⑨:ユーロ円月足チャート (赤:陽線 青:陰線)

トレンドで獲りたいのでしたら、今はユーロドルよりもユーロ円のほうが分かりやすいと思います。先週のユーロ円は3円超下落していますし、先週、昨年の最安値126円09銭を割り込み、その後、更に1円以上下落し、節目の125円手前の125円016銭まで安値を切り下げています。目先2013年6月13日の安値124円95銭と2013年4月16日の安値124円96銭を割り込むと、2013年4月3日の安値119円10銭までターゲットがないため、フィボナッチ50%戻しの121円93銭や心理的節目の120円ぐらいまでは下落の可能性があると思われます。

また、トレンドの出やすい通貨ペアどうしのユーロポンドも方向は分かりやすいと思います。
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表⑩ ユーロポンド日足チャート (赤:陽線 緑:陰線)

ただ、チャートご覧頂いてお分かりの通り、毎日のように上に下にひげを引く通貨ペアでもあるので、エントリーのタイミングを誤ると、往復ビンタの可能性もあるので注意が必要です。基本は逆張りせずに、トレンドの出ている方向にエントリーしたほうが良い通貨ペアです。

リスク回避の場面でのユーロドル取引の注意

先ほどもお話ししましたが、現在リスク回避の場面でユーロが買われる傾向にありますが、リスク回避の場面でユーロが売られることもあるので、この点について頭に入れておきましょう。
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表⑪:ユーロ円2時間足チャート (赤:陽線 青:陰線)

このチャートはユーロ円の2時間足ですが、11月14日、日本時間早朝、パリ多発テロが起こり、その事件を受けての翌週16日のユーロ円は窓を開けて下落スタートとなりました。その後、窓埋めを完了し、再びユーロ円は下落します。このように、リスクの内容によっては、ユーロ買いではなく、ユーロ売りで反応することがあることを覚えておきましょう。今後も同じようなことがユーロ圏で起る可能性はあると思います。

ドル円も通常、リスク回避時にドル売り円買いで反応しますが、ドル買い円売りで反応するケースもあることはリスクのコラムの中で紹介しましたね。

おまけ:今週のユーロドルは?

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表⑫:ユーロドル日足チャート (赤:陽線 青:陰線)

今週もユーロは外的な要因に振らされると思われます。要因は先ほどお話しした2つ。1つはポンドの動向。そしてドルの動向。

ユーロ単独では下落したがっていると思われますがポンドとドルの動向によっては、下落を妨げられる可能性があります。

チャート的には、目先下方面は200日移動平均線がサポートになっていると思われ、同じ付近にフィボナッチ38.2%戻しのラインもあることから、一旦はこの付近が逆張りのエントリーポイントになると思われます。上サイドは、先週は5日移動平均線に上値を抑えられており、このラインを上抜けできるかがポイント。また6日連続で前日高値の更新ができていないため、前日高値もターゲットになりやすいと思われます。